『国家のシロアリ 復興予算流用の真相』(小学館)
東日本大震災から4年。ハコモノやインフラ整備など表面上の復興は一見進んでいるようにみえるが、いまだ約23万人もの人々が避難生活を続けている。災害公営住宅にしても着工したのは計画の半数ほどで、住宅地の高台移転も宅地造成の完了は3割程度だといわれている。このように被災者の視点、目線での復興は遅々として進んでいないのが現状だ。
そんななか、今後の復興予算の行方に注目が集まっている。3月に入り竹下亘復興相が復興予算の「全額国費負担の見直し」を示唆したからだ。国が集中復興期間としているのは震災から5年間の今年2015年度まで。しかし、多くの人々が避難生活を送っていることからも分かるように、復興予算は人々の仕事や生活への現状復帰、住宅支援には十分に活用されていない。そんな状況の中での竹下復興相発言は「自治体の過大な負担」と受け止められ、被災地に大きな衝撃を与えている。
実際、これまでも復興予算はまともに活用されていたとは決していえないものだった。その典型が復興予算の流用問題だ。
この問題を「週刊ポスト」(小学館)誌上でスクープしたジャーナリスト・福場ひとみによる『国家のシロアリ』(同社刊)は、復興予算がどう流用されたかを追ったルポルタージュだ。そこから浮かび上がってくるのは25兆円という莫大な復興予算を巡る省庁、官僚たちの予算ぶん捕り合戦と、被災者を無視したあまりに杜撰でいい加減な予算流用の実態である。
・国会議事堂のステンドグラス代 1億2000万円
・霞ヶ関合同庁舎4号館改修費 12億円
・シーシェパード対策費 23億円
・金融庁職員の基本給 5205万円
・沖縄県の道路整備 22億円
・国際交流基金の芸術家の海外派遣など 1億2000万円
本来、被災地の復興という目的のはずの復興予算が、全く別の目的に、そして被災地とは何ら関係のない地域にその大半が充てられていた。しかもなかには天下り法人にまで。
なぜこんなことが起こっているのか。著者は政治家、担当省庁への取材を開始する。そこで浮かび上がってきたのが日本の予算を支配する官僚たちの権力構造と、癒着、そして共犯関係にある政治家の存在だった。