こうして要所要所でターゲットを見つけては“血祭り”に上げ、批判を許さない“空気”をつくりあげる。メルマガで為政者の政策に対して疑問を提示しただけでこのありさまだ。メディアに対する姿勢も、推して知るべし。いま、大阪のマスコミは「大阪都構想」のリスクやデメリットについて書くことが非常に難しくなっているという。在阪の全国紙記者は、こう語る。
「トラブルを恐れて橋下批判は上がなかなか通さないんです。もともと橋下シンパが多かったテレビ局はもっと厳しい。萎縮なんてものじゃない。そもそも『都構想』は2008年に橋下さんが知事選に当選して“大阪の王様”になれたと思ったら、足元に“大阪市長”というもう一人のもっと強い王様がいて、何かにつけてタテついてきた。それで頭にきて、大阪市をなくしてしまえと思ったのが出発点です。『都構想』というのも“印象操作”で、実体は大阪市の解体、府への吸収なんですよ。でも、いまさらこんなこと表立って誰も言えない……」
かくして大阪の言論空間は「都構想礼賛」一色になる。
いずれにせよ、そんな橋下氏の“努力”が実を結び、5月の住民投票では「都構想」が圧倒的多数で“可決”される見通しらしい。
そして、この住民投票はどうやら、第二幕を開けることになるようだ。それは、ズバリ「改憲」だ。今度は在京の全国紙政治部記者が解説する。
「実は、安倍(晋三)さんと橋下さんの間で『改憲』と『都構想』のバーター密約をかわしたと言われているんです。安倍さんは人質事件を口実に、にわかに改憲に前のめりになっている。2月4日には『改憲発議とそれに続く住民投票は来年の参院選後になる』と、ついに日程まで口にするようになりました。普通に考えたら、参院選で改憲を争点にするのは、議席を大幅に減らす危険がある。実際、これまでは安倍首相も慎重姿勢を崩していなかった。それがここにきて、強気の発言をするようになったのは、橋下さんとの密約で来年の参院選で改憲を発議できる3分の2を確保する見通しが立ったからでしょう。『大阪都構想』については維新に協力するから、『改憲』については維新が協力する、というわけです」
以前から水面下で囁かれていた話だが、安倍晋三首相が1月14日に関西テレビのニュース番組『スーパーニュースアンカー』に出演し、「(大阪都構想は)二重行政をなくし住民自治を拡大していく意義はある。住民投票で賛成多数となれば、必要な手続きを粛々と行いたい」とエールを送る一方、「維新が憲法改正に積極的に取り組んでいることに敬意を表したい」と語ったことで、にわかに現実味を帯びてきた。橋下氏は「僕はうれしくてしょうがなかった」と喜びをあらわにし、「(改憲は)絶対に必要で、総理にしかできない。何かできることがあれば何でもする」と、協力姿勢を鮮明にしたのである。