『日本人が保険で大損する仕組み』(橋爪健人/日本経済新聞出版社)
「結婚したら家族のために入る」「社会人になったら、そろそろ入る」など、「保険は入るもの」と考えがちな日本人だが、米国では「保険はできるだけ入らない」と考える――。米国人が保険に入ろうと考えるのは「住宅ローンを借りる時」「富裕層の人が相続対策でキャッシュが必要な場合」くらいだという。
『日本人が保険で大損する仕組み』(橋爪健人/日本経済新聞出版社)では、日本生命保険出身の企業向け保険ビジネスコンサルタントである著者が日本人の「保険幻想」に迫っている。
とある保険の統計データでは「生命保険料ベースでは、米国が世界一、そしてほぼ並んで日本が2位、そのあと英国が3位で、4位がフランスです(略)生保の世帯加入率を見ますと、日本は約90%で米国が80%ですので、日米とも一般家庭に生命保険がかなり普及していることがわかります」
しかし、日本だけが米英仏との間に大きな違いがある。日本人だけが死亡保障を重視しているのだ。
「米国では生命保険と言っても、そのうちの80%が年金保険と医療保険だからです。日本のような公的な医療保険制度のない米国では、国民が自分で医療保険に入らなければなりません」
「日本人が生命保険と聞くと、すぐに思い浮かべる代表的な死亡保険は、米国では20%に過ぎませんが、日本は約70%です」
「近代保険発祥の国である英国でも同じです。保険料規模では、米国、日本に次いで世界第3位ですが、保険商品は運用目的の一時払いの個人年金が中心です。日本で主流の死亡保障保険はごくわずかです」
「統計上で世界第4位のフランスは、米英よりさらに生命保険に入りません。(略)銀行で取り扱われている投資信託や債券のような運用系の金融商品のひとつとして、貯蓄系保険が扱われています。銀行は運用商品のラインナップのひとつとして貯蓄系保険を売っているわけです。人々は、死亡保障系の生命保険にはほとんど入りません」(同書より)
「夫が万一の場合に備えて妻や子供のために保険に入る」という日本では固定観念に近い考え方も、夫婦共働きが主流の米国や、社会保障が充実し高福祉で、伝統的に女性の社会福祉が進んだ欧州ではなじみが薄いのだ。
「問題は日本です。欧州と同じように国の社会保障が充実しているのに、依然として多くの人が死亡保険や医療保険に入っています」
日本が欧州と同じように社会保障が充実しているとは思えないが、社会保障制度が充実していない米国に比べても3倍以上の割合で死亡保険に加入していることを考えると、日本人が「保険過剰」なのは間違いないだろう。