しかし、これを古舘はこのように否定する。
「テレビ朝日の会長と俺が仲が悪くなったってんだよ。いや、そんなことないよ、だって、そもそもここで『トーキングブルース』ってのはオシャレだからやったらどう古舘さん、っていうのはテレビ朝日の会長が言ったもん」
「古舘さんも『トーキングブルース』やってガス抜きしたらどう?っつたのは会長なんだから」
だが、話はこれで終わらない。古舘はつづけて、「ということは、俺に『報道ステーション』辞めさせてそういう方向でがんばったらって引導渡してるってことか?」と皮肉を込めるように話を落とすのだ。
「いいんだ別にそれで。いいんだよそれで。ね? いいときだけのテレビ局ってのはフリーになってから30年だからよーくわかってるから。俺の商品価値が落ちると判断するところまでギリギリがんばるしかないってことなんだよ。こんなかで、月曜から金曜まで、夜10時台の報道番組、責任感あふるるかたちでやってる奴、いる? いたらお目にかかりたい」
ここまで自負する古舘には、それなりの理由がある。毎日100本以上やってくるという視聴者からの電話・メール。それを翌日必ず目を通すというが、「95%以上が誹謗中傷」。内容は「古舘バカ死ね」。古舘は「そりゃ傷つくよ、メッタ打ちされるからな」と言いつつも、そんな心ない声にも「強烈な俺のファンじゃないか。ありがとうありがとうって無理矢理言い聞かせる」らしいのだ。そして、今年ネット上で炎上した「小保方さんのSTAP細胞のときの、古舘がパワポ知らなかった騒動」にも触れ、「パワポ知らないから何だっつうんだホントに!」と反論。「いちばん頭きたのが、『歳も歳だから仕方なくね?』って。バカヤロー! 上から目線で言いやがって若者よ」と、ここぞとばかりに叫んだ。
『報ステ』のキャスターをはじめて今年で10年。その間、いかに古舘が溜め込んできたかが露わになった、このトークライブ。鬱憤をぶちまけるだけぶちまけた感もあるが、しかし、舞台の最後を、亡くした姉や友人たちの思いとともに、古舘はこのような言葉で締めくくった。
「俺はこうやって喋りを生業にしながら、肝心なときにきちっとした言葉が言えないでいる。(中略)俺は覚悟がないばっかりに、最後の一言が言えずにここまできた。俺はこれからは、そうはいかない覚悟を決めた。俺の毎日やってる報道の仕事のなかで、それをやっていこうと腹決めた。だってそれやんなかったら意味がないんだよ」
「みんないいか、よーく俺を見ててくれ。俺がそのことができるようになるのが先か、俺の賞味期限が切れちゃうのが先か、どっちか、よーくみんな見ててくれ。だから、また、月曜日夜9時54分から、俺を見ててくれ」
覚悟を決めて『報ステ』をやっていく。──報道番組にときの政権が平気で政治介入してくるこの時代に、古舘は「見ててくれ」と宣言した。この心意気だけでも十分に買いたいではないか。まわりは敵ばかりかもしれないが、どうか腐ることなく古舘にはがんばってほしいと切に願う。
(水井多賀子)
最終更新:2014.12.20 12:35