「妻が一家の稼ぎ手で夫には収入がないという状態でありながら、男としてのプライドを保つのは、きっと彼でなくても難しいことですよ」
「最近の私は、自分の限界を超えるほどの仕事を引き受けていたけれど、出て行くお金が多くて、働けど働けど、な状態でした」
こうした状態が夫への不信感にも繋がったと村山は言うが、小説家志望だったにもかかわらず、その夢がどうやら叶うことはなかった夫の立ち位置も大きかったようだ。
「常に小説という魔物と向き合う私が、人一倍モラリストのくせに一方でモラルなんてくそくらえと思っていることなども、彼はすべて知っていましたから、いっしょにいてしんどかっただろうなと思います」
そんな鬱屈した夫は借金や浮気に走ってもいく。
「『女遊びしたのも借金を作ったのも、どこか由佳への復讐みたいな気持ちがあった』と淡々と言われた時、ああ、それは男の人としてすごく自然な感情だな、と思えました」
だが、誤解を恐れずに言えば、村山が夫の女性関係や金銭問題程度で離婚を決意するとは思えない。実際、村山は結婚当初、夫が抱えていた借金を肩代わりしたこともあったし、結婚後、夫が仕事を辞めることに問題を感じていた節はない。もうひとつ指摘すれば、村山は最初の結婚の際も、夫を自分の事務所社長に据え、マネージメントや秘書的役割を与えている。
今回も、夫をスポイルしたのは、村山自身ではないのか。しかも、村山自身は2番目の夫に影響され、大型ハーレーに乗り、胸にタトゥーを入れるなど大きく変わった。そんな夫をその程度で手放すはずがないのでは、と。
インタビューで村山は、いくつもの問題があり、それらが積もり積もったものがある日溢れてしまったと語っているが、しかし離婚の最大の鍵は村山作品に象徴される女性としての“性愛”“官能”の部分にあると思えるのだ。告白記事の中に、こんなそれを思わせるこんな記述も存在する。
「私の望みは『私を女にしておいてね』ということだけでした。恋愛のことを多く小説に書いている私にとって、それは創作の原動力であり、根源的な問題です」
しかし現実はまた、村山の思いとは裏腹のものだったという。
「実際の関係としては、かなり早い段階から男と女ではなくなっていた」