これは、いちゃもんでいっているわけではない。実際、安倍が首相になる以前は総理大臣がテレビの単独出演をすることは原則、御法度とされていたのだ。
「総理の影響力や偏向報道の批判が起きることを考えて、以前は総理大臣は共同会見しかしないというのが不文律になっていた。ところが、第一次安倍政権が発足すると、安倍首相はテレビ局や新聞、週刊誌などにをもちかけて、どんどん単独出演をやり始めたんです。2007年の参院選前にも日本テレビ、テレビ東京の報道番組などに単独出演した。これは明らかに放送法違反ですよ」(全国紙・政治部記者)
そしてきわめつけは、『笑っていいとも』(フジ系)のテレフォンショッキングへの出演である。報道番組で政策を主張するなら、単独出演でも、キャスターなりが批判や反論ができるから、まだ公平性は担保できる可能性がある。しかし、バラエティはそういうチェックを受けることなく、好イメージだけを広めることができる。それこそ、安倍首相の大好きな「印象操作」であり、そんなものに、最高権力者、特定政党の代表をさせるフジテレビは、明らかに放送法違反だろう。
そして、開いた口がふさがらないのが、安倍政権=自民党のご都合主義だ。自分たちの利益になるときは自ら偏向報道を仕掛けているくせに、都合が悪くなると偏向だと大声で批判を始める──。こんなことを許していたら、日本に「報道の自由」なんてなくなってしまうのではないか、と空恐ろしくなるが、そんな恐怖を抱いているのは少数派なのだろうか。ネットをのぞくと、今も「公平を要求して何が悪いの?」と言葉を額面通りにしか受け止めない人たちの声があふれている。
(野尻民夫)
最終更新:2015.01.19 04:00