●『こじき大百科 にっぽん全国ホームレス大調査』(村田らむ、黒柳わん/データハウス)
ホームレスの生態系を入念に調査した本。当初、出版社の社長によって『こじき』というシンプルな書名にさせられそうになったらしい。案の定、名古屋の労働団体から抗議が寄せられ、自主回収扱された。なお、著者は同団体からホームレスの実情についての講習を強制的に受けさせられたらしいのだが、既にその様な本を一冊書き上げている訳で、ほとんど全て知っている内容だったとの事。今度は数年後、竹書房からほぼ同一の内容の『ホームレス大図鑑』を出したものの、これもわずか数日で抗議が殺到しまたしても自主回収に。もはや伝説となりつつあったが、それから8年近く経った2013年、今度は『ホームレス大博覧会』を日本で最も不謹慎な出版社、鹿砦社から刊行した。なお、この本は「ホームレス・トレーディングカード」まで付いた凝った編集だ。これも刊行後、話題になったが自主回収や発禁には至ってない模様。
●『増補改訂版 笠井資料 日本女性の外性器 統計学的形態論』(笠井寛司/フリープレス)
産婦人科用診察台の上に載せられた10代から40代までと見られる女性の性器の接写写真8330枚を、1135ページにも上って載せた約5万円の医学書。大陰唇や小陰唇、陰核、肛門などを詳細に分析している。被写体となった女性患者に無許可で撮影して掲載したのではないかと言われ、後に女性団体から訴えを起こされる。自由人権協会や法務省人権擁護局からも非難が寄せられ、日弁連は警告を発した。著者はその後、大学の助教授のポストを追われた。なお本書は最終的に「医学書」として認められ、現在でも一般的に購入する事は可能である。週刊誌などで度々話題になる本でもあり、世間的知名度は高く、本書の中身を勝手にスキャンしたCD-ROMも流通してしまっている。
●『子ども虐待の身体所見』(クリストファー・J・ホッブス、ジェーン・M・ウィニー/明石書店)
この場で紹介する事も躊躇われる医学書。虐待された児童達の写真が膨大に掲載されている。アイロンを押し付けられヤケドを負ったものや、器物による痛々しい損傷や暴行による痣の例などは見るだけで胸が痛む。性的虐待にあった児童の性器や肛門も無修正でそのまま載っており、目を背けたくなる。「致死的虐待」という項目では死体も載っているので、閲覧するに当たってはくれぐれも注意が必要だ。翻訳者が興味本位で本書を閲覧する事に対して警告を発しており、実際軽々しい気持ちで見ると罪悪感を感じる事は必至だ。しかしこの本で載っている様な痣や傷を持った子どもを見かけたら、虐待されている可能性があるので、保健所や警察に通報した方が良い。その意味で言えば、実はこうした幼児虐待による傷や痣などの症例を数多く掲載した本書は、多くの人に見て貰った方が良い、社会的に有意義な資料とも言えるのではないだろうか。幾つかの例で虐待が発覚した後、保護され、養子先で健やかに育ち、健気な笑顔を見せている子どもが何人かいるのが救われる。児童虐待は周囲の人間による早期発見が肝要である。
以上、本記事では『ベスト珍書』の中でも最もタブーに切り込んでいたり、見ていて気持ち悪くなってしまったり、世間を騒がせた究極の激ヤバ本をピックアップした。他にもここには掲載できなかったが、性病を患った性器の医学写真集、葬儀屋による死体の整え方の教則本、事故物件の不動産価値を算定する本など数多くの、特種な業種・読者層向けのブラック専門資料集を『ベスト珍書』で紹介したので、興味を持った方々には是非手にとって貰いたい。
ただ、『ベスト珍書』は、決してここで紹介した様なブラックな本だけを集めたものではない。例えば極端な形をした変型本や、ラーメンの背脂だけをランキングした本、猫が登場する映画だけを集めた本、国内のロープウェイを制覇した本など、ゆるふわ系の珍書も多く紹介しているのだ。エログロに抵抗がある方々も本記事で紹介した様な本が載っている章を読み飛ばして貰えば、『ベスト珍書』は十分に楽しめる内容となっている。機会があれば「ゆるふわ珍書BEST5」も紹介してみたい。
(ハマザキカク)
最終更新:2018.10.18 05:35