しかし、こうやって発言を読めば読むほど、こんな人物を「誠実」の手本として「道徳」の教科書に載せてしまっていいのか、と心配になる。でも、きっといいのだろう。弱者を叩いて強者に媚びる、自分に甘く他人に厳しい、国家に頼らず自己責任を要求する、女性はよき母親か性の道具でしかなく、社会で活躍するなんて我慢ならない、自分のことを棚に上げて他人に上から説教する……考えてみれば、これ、全部、安倍政権を支持するネトウヨと共通する心性でないか。国民総ネトウヨ化を狙っている(?)安倍政権としては、曽野綾子はまさにうってつけの教材、モデルなのである。
子どもにそんな教育を受けさせたくない場合はどうするかって? 大丈夫。曽野は前掲『人間の基本』でひとつだけいいことを語っている。
「文部科学省や学校の先生、親だからといって頭から信用してはいけない。本当は誰も全面的に信用などできなくても、裏を返せばそのすべてが教育材料になります」
ぜひ、これから安倍政権で教科化した道徳教育を受ける子どもたちにこの言葉を教えてあげてほしい。そうすれば、教科書で曽野のことを読まされても“人の痛みもわからないような恥ずかしい歳の取り方はしたくないね”と思うようになってくれるはずだ。
(酒井まど)
最終更新:2015.01.19 04:54