この間、海外では、9条がノミネートされたことがかなり前から話題になっていた。そして、前述したように、10月3日にはノルウェーのオスロ国際平和研究所(PRIO)が1位に予想した。普通なら、自国の憲法が有力候補になれば、もっとお祭り騒ぎのようになってもいいはずだ。ところが、日本の大新聞やテレビでは、今日になるまで9条のノーベル賞問題をほとんど報じなかった。比較的大きめの記事にした朝日にしても、わざわざ改憲論者の憲法学者の「ノーベル賞は欺瞞」というコメントを入れて、バランスをとっている。
こうした状況について、民放の記者がこう解説する。
「ノーベル賞を獲ってくれたら別ですけど、その前に9条の問題を大々的にやるのはむずかしいですね。官邸からにらまれてプレッシャーをかけられるのは確実ですし、放映したら、ネトウヨ的な視聴者から『偏向』と抗議が殺到しますから。我々としては、面倒をつい避けたくなってしまう」
世界では高い評価を得ている憲法が自国ではタブーになってしまった。これが今の日本の現実なのである。
(伊勢崎馨)
最終更新:2015.01.19 05:07