パートはフルタイムに認められた権利を同等に享受できる。例えば報酬も正規雇用と比例的でなければならないし、有給休暇、社会保障、失業保険等についても同じ権利を持つ。もちろん育児休暇も取得できるし、勤務時間も書面契約し、その変更が解雇の理由にはならない。パートからフル(またはその逆)に移行する優先権があり、使用者は対応する空きポストを示さなくてはならない。
「要するに、パートタイムとフルタイムの違いは法的には労働時間数」だけなのだ。フランスのパートは日本のように不安定雇用ではなく、選択する働き方といえる。
もちろん育休も充実している。出産休暇は産前6週、産後10週だが産前を産後に移行できるなど柔軟性も高い。賃金は出産保険などから手取りとほぼ同額が支給されるし、それは農業や自由業にも適用されるのだ。そのため日本の女性の半数近くが出産前に仕事を辞めるのに対し、フランスでは83%がそのまま仕事を続けることができるという。
さらに保育制度も充実し、柔軟性に富んだ様々な制度がある。驚くことに「フランスでは3歳になると育児問題は解消する」らしい。
子どもが3歳になると原則全員が幼児学校に入学できるが、これが無料! そして日本の幼稚園との大きな違いが「時間」だ。朝8時半から夕方4時半までと長い上、併用できる託児制度もあり夕方6時ころまで預けることができる。さらに3歳以下でもヌースリという家庭的保育者が子どもを預かってくれる。これは有料だがその半額は手当が支給される。それだけでなく無許可のベビーシッターにまで半額の手当が出るという。その他休みの日や夏期休暇でも子ども達が単独で参加できるプログラムが充実しており、このような公的支援によってママたちは安心して出産、子育て、仕事ができるという。
働く女性、出産した女性に手厚い様々な政策がなくして、女性の社会進出や出生率の回復は望めない。だが日本ではこうした支援もなく「3年育休」などという女性の実情とは遠く離れた欺瞞がまかり通ろうとしている。だが、さらなる大きな違いがある。それが父親の権利だ。
EUやフランスでは「男女が親としての責任をより平等に分かち合う」ため父親の育児参加を奨励している。父親休暇も義務化され、誕生後すぐの5日間と1カ月以内に5日を義務化して、給与はほぼ全額が認められる。そのため04年には3分の2の父親がこの休暇を取得しているという。その他にも両親が3カ月ずつ取れる両親休暇、誕生日休暇などもあり、農業や自由業、失業手当支給者など「すべての男性労働者」の権利でもあるのだ。
男女問わず、育児は親としての当然の権利であり、義務。フランスではそうした考え方が浸透しているようだが、一方の日本はというと──。
安倍首相の言う「女性の積極的登用」「子育て支援」にはこの観点が決定的に欠けていると言わざるを得ない。それは「育児は母親がするもの」という古くさい“保守オヤジ”の価値観が全面的に押しつけるもので、父親の積極的育児参加という観点など毛頭ない。もちろん日本でも09年に父親の育休取得を奨励する方策を取ったが、その取得率はわずか1〜3%ほどだ。女性の社会進出などと言いながら、子育てを女性だけに押し付ける政策と言える。