では、立場を変えてみて、お母さん病を患っている人に子育て法などを勧められた時はどうすればいいのだろうか。女性は相手からの否定を極端にいやがる傾向があるので、「やりたくない」「興味がない」といった否定的な言葉を言わずに、「私、いまいっぱいいっぱいで」といったように「あくまで『自分には無理』というトーンで話す」ことがベストなのだとか。
また、江角・ママ友の両者が互いに罪をなすりつけあっているのが、悪口の話。ママ友に限らず、集団においてその場にいない人の悪口大会は発生してしまうことが多い。基本的なことだが、人間関係の荒波に巻き込まれないのは、そういった場では絶対に「自分自身が人の陰口をきかないこと」が重要だ。だからといって、陰口をやめようと批判的なことを言うのは、お門違いなのだという。なぜなら「陰口とは心に傷を負っている人がするもの」だから。コンプレックスやトラウマを持っている人が「その傷を正論風に語っている」のが悪口なので、「『癒されてない人の痛み』について聞く」というスタンスで相手をねぎらう言葉をかければ、悪口大会に参加しているという罪悪感からまぬがれるという。
江角の場合、悪口大会があったことを触れまわっていた、というのが大きな失敗だろう。仮にママ友が別のママ友の悪口を言っていたとしても、なにかしらの傷があるのだと推測し、心にしまっておく優しさが必要だったのだ。
一連の騒動では表立ってはいないが、江角とママ友の対立に板挟みになった保護者もきっといたはず。仮に自分がそういった環境に置かれた時は、対立する女性の間でどのように振る舞えばいいのか。まず、現実的な方法としては、どちらに誘われても誘いを断り、そのことを苦痛に思わないようにすることが大切だという。「誘ってもらって本当に嬉しいんですけど」と感謝の言葉を添えながら、「付き合いの悪い人」というポジションに自分を置くように心がけるのだ。そして、両者の対立が見えていないように振る舞いながら、対立する2人以外のコミュニティーの人とは信頼関係を築いていく。気弱な人には難しく感じられるかもしれないが、対立に巻き込まれた時のストレスを考えれば、確実に楽な道だと言えるだろう。
今回の江角の騒動を受けて、「ママ友は怖い!」という声もあがっている。もちろん、集団で無視をされたり、仲間外れにされることは、大人になっても不快な出来事だ。しかし、水島氏は「ママ友は『社会的な仕事』と割り切ることで、簡単に解決する話」だと話す。そして、「ママ友の中にそんなに親しい人ができないのは決して珍しくないこと。『外された』と、悲しんだり落ち込んだりする必要はない」と分析する。
近年の子育てに対する異常な熱気をはらんだ報道とともに、ママ友のイメージがいいようにも悪いようにも肥大化し、ママ友という存在が女性にとって大きな圧力になる傾向がある。もちろん、ママ友として知り合ってから唯一無二の親友になることもあるだろうが、もとを正せば「同じ年ごろの子どもを持つ顔見知り」。過剰な期待や恐怖こそが、ママ友関係を複雑にしていることに気づけば、余計なトラブルには巻き込まれずに済むのではないだろうか。
(江崎理生)
最終更新:2018.10.18 03:17