日本は犯罪者に対して重罰を求める風潮は根強く、先進国では廃止が進む死刑制度にしても多くの国民がこれに肯定的だ。遺族感情を最大限重視し「犯罪者は極刑に」という論調がある。
犯罪を犯した人間に対する精神的ケアは無視され続け、「犯罪者の心の闇なんていい訳だ。聞きたくもない」といった空気さえ蔓延している。犯罪者生育歴についての報道はされるものの、それはあまりに興味本位的で、それを学術的に研究し今後の犯罪防止に役立てようとする動きは(裁判所でさえ)薄い。
だが犯罪を犯した人間に対し、単に重罰に処し、長期間刑務所に入れたり、死刑にしたりするだけでいいのか。それで犯罪はなくなるのか。
それは動物虐待と犯罪との関係だけではない。日本では動物虐待との関連はおろか、容疑者の精神鑑定にさえ反発する声は大きい。7月30日の情報番組『ミヤネ屋』(読売テレビ)でコメンテーターの梅沢富美男はこう声を荒らげた。「精神鑑定なんておかしい。普通の子はこんな犯罪を犯さない!」。
まるで今回の犯罪が佐世保の少女だけの特殊なもので、その背景など関係ない、知る必要もないと言わんばかりの剣幕だ。しかし犯罪を犯した人間をただ責め立てればいいのか。感情論では犯罪はなくなることは決してない。
悲惨な犯罪を未然に防ぐためにも、「動物虐待」と犯罪の関係だけでなく、猟奇的といわれる事件と心との因果関係といった研究が今こそ必要なのではないだろうか。
(伊勢崎馨)
最終更新:2014.07.31 08:16