『やりすぎ都市伝説』では現地フリーメーソンのグランドマスター(支部長のようなもの)や歴史研究者にインタビューしていたが、かなりアンフェアな演出がなされていたのは否めない。両人物とも明らかに歴史的意味で18世紀のイルミナティ組織の説明をしているのに、あたかも「今現在イルミナティが存在している」と語っているように編集している。鬼の首をとったかのごとく「フリーメーソンが当たり前のようにイルミナティの存在を認めた!」と放送しているが、そりゃ過去に存在したのは当たり前の話だろうよ……。
また、イルミナティ創始者ヴァイスハウプトがメーソン会員だったこと(当時の状況として別に不自然ではない)について、グランドマスターが「別に興味がない」と発言したのを「明らかに怪しい」と糾弾していたり、まるで騙し討ちのような誘導演出。いくらバラエティ番組はプロレス的に楽しむものとはいえ、これは明らかに「やりすぎ」だ。海外ロケだからバレないと思ったのだろうが、番組を観たら二人とも激怒するのではないか。
『やりすぎ都市伝説』自体は好きな番組なので、これはかなり残念だった。変に陰謀論を突き詰めようとすれば、ほぼ必ず取材倫理に触れるような事態になってしまう。都市伝説を気楽にワイワイ紹介していた頃に戻ってほしいものだ。
もっとも今では『やりすぎ都市伝説』くらいしか、関の陰謀論をとりあげてない状況にはなっている。『関暁夫の都市伝説』もここ2年ほどは出版されていない。さすがにフリーメーソンにまつわる噂は、トンデモ陰謀本ですら扱わなくなったようだ。しかし、陰謀論それ自体が無くなった訳ではない。東日本大震災後、また様々な陰謀についての噂が、かつての勢いと同じく、かつ80年代のそれとは違ったムーブメントとして広まっていたりもする。その辺りの話は、また場を改めて書いてみよう。
(吉田悠軌)
最終更新:2014.07.29 04:00