よく「天才」といわれる日野氏だが、こうして見ると、天才というより、現象を冷静に分析し、ロジカルに作戦をたてる戦略家といったほうがいいかもしれない。ただ、日野氏が常人とはまったくちがうのは、ものづくりへの情熱だ。日野氏は若い社員が面白いアイディアを出すと、嫉妬してしまうのだという。本の中で、日野氏はこんな風にかたっている。
「嫉妬心というか、自分よりいいものをつくれる人間がいるなって思うと、そいつに興味を持ちますね。なんでそんな力を持っているのかを知りたくなるというか」
だから、いいアイディアを出してきたからといって、褒めるわけではない。若手に対抗心を燃やし、「こんちくしょう」と思うこともあるという。
なんだか“大人げない”社長だが、このエネルギーがあるから、ヒットメーカーとして君臨し続けられているのだろう。ただ、なんでもかんでもひとりでやってのけて、社員がいいアイデアを出すと、嫉妬心をむき出しにする上司というのは、部下にとって相当やりづらい気がしないでもないが……。
(金子ひかる)
最終更新:2018.10.18 04:20