『中国食品を見破れ スーパー・外食メニュー徹底ガイド』(文藝春秋)
いま、品質保持期限切れの鶏肉が供給されていた問題が世間を震撼させている。上海の食肉加工会社「上海福喜食品」が消費期限の切れた鶏肉をチキンナゲットなどに加工して供給。この会社から約2割の「チキンマックナゲット」を輸入していたと公表した日本マクドナルドをはじめ、同会社から仕入れた材料を使用していたコンビニ大手・ファミリーマートも「ガーリックナゲット」「ポップコーンチキン」の販売中止を決定した。
この問題が発覚したのは、上海テレビによる潜入取材がきっかけ。そこに映し出されていたのは、あきらかに腐敗が進んでカビが生えている青い色をした肉や、床に落ちた肉を生産ラインに戻すなどのずさんな工場の実態だった。「あんな肉を食べていたかもしれないなんて……」と、ぞっとした人も多いはずだ。
しかし、マクドナルドの鶏肉は、消費期限切れどころではない「危険」をはらんでいることをご存じだろうか。
警鐘を鳴らしているのは、『中国食品を見破れ スーパー・外食メニュー徹底ガイド』(『週刊文春』特別取材班/文藝春秋)におさめられた「マクドナルドの中国産鶏肉が危ない」という、ノンフィクション作家・奥野修司氏によるルポだ。
まず、ルポのはじまりは昨年1月に遡る。中国のネット上で、中国の巨大鶏肉加工企業・河南大用食品グループが「病気で死んだ鶏を長期にわたって加工販売し有名ファストフードに売っていた」という噂が流れた。この疑惑が飛び火したかたちで、日本マクドナルドは「鶏肉原料の一部に河南大用食品グループの鶏肉を扱っている」と取材に対して認めたのだ。
果たして河南大用食品グループの実態はどうなっているのか──それを確かめるべく奥野氏は河南大用の加工場に取材へ向かうのだが、行き先をタクシー運転手に伝えると、「あそこは本当に汚いから行くのは嫌なんだ」と顔を歪めたという。しかし、周辺住民に病死した鶏について尋ねても、口止めをされているようで口は固かった。
さらに奥野氏は、河南大用に鶏を納入している養鶏場へ。そこは「鶏舎は日本にくらべると劣悪で、しかも一坪あたり九十羽近い超過密飼い」。奥野氏も「病気にならないほうが不思議」と綴っているが、実際、この養鶏場では取材時、“数万羽の鶏が大量死”し、すでに鶏の気配すらなかったという。
謎の鶏の大量死。その理由について、上海の獣医はこのように推測している。
「成長ホルモンや抗生物質が鶏に過剰に投与されていたことが問題になって以来、河南大用がこうした薬物を簡単に使えなくなったために大量死したのでしょう」
つまりはこうだ。陽もささないぎゅうぎゅう詰めの養鶏場では鶏はすぐに病気になるため、病気にさせないために抗生物質を使用する。日本でも抗生物質を使う業者もあるというのだが、中国の場合は、出荷前に抗生物質を鶏が排出する「休薬期間」が設定されていない。いや、実際は休薬期間が定められているが、「(休薬期間を)守っていたら半分は死んでしまう」(中国の畜産指導員のコメント)というのだ。……この話は、当然レアケースではない。まさに中国の鶏は抗生物質漬けにされているといっていいらしい。