“涙活”の医学面を監修している脳生物学者によると「情動の涙を流すことには、ストレスを軽減させるほかにも、自律神経のバランスを整える、免疫システムを活性化させるという効果」がみられるという。さらに、同じストレス解消法の「笑い」は右脳優位であるのに対し、「泣くためには記憶を引っ張り出してくる必要があるため、右脳と左脳をどちらも使った高度な働きをし、笑うよりハードルが高い分、副交感神経への刺激が強くなり、よりストレス解消の効果も大きい」らしい。
また、涙を流した後は集中力が高まることも実証されている。
「早稲田大学のラグビーチームは、大事な試合前には監督が選手に熱いメッセージを伝える涙活をして、リラックス状態を作っているのです。ひととおり泣くと緊張がとれて高い集中力を発揮し、最も良いパフォーマンスが出せる状態になる」
こうして見ると、「泣くこと」はいいことずくめではないか。ストレスを解消し、心を穏やかにし、そして共感能力を高める。ただ、野々村元県議のケースは、すべて逆の目に出ているような気もするが……。いや、実は意外にそうでもないのかもしれない。野々村元県議がもし泣かなかったとしても政務活動費問題で追及を受けるという立場は変わらなかった。そのまま地味に責任を問われて結局、地味に政界を追われることになっただろう。だが、野々村元県議は泣いた事で、世界中が無視できないある種のエンタテインメントにまで昇華されたのだ。仮にこれから刑事責任を問われたとしても、ほとぼりが冷めたあとに「元号泣県議コメンテーター」や「いつでも泣ける号泣ピン芸人“泣き虫ののちゃん”」、さらには涙活イベントの特別講師など、新たな未来への可能性も広がった。
今の世の中は行き詰まり感が漂い、インターネットやSNSに氾濫する情報そのものに流されて自分の感情に集中することができにくくなり、「泣きたくても泣けなくなった人が少なくない」と、寺井氏は言う。
だからこそ、言いたいことも言えずストレスを抱えている方は、リミッターを外して人前で号泣してみよう。そうすれば、思いがけない未来への扉が開くかもしれない?
(宮谷 烈)
最終更新:2017.12.07 07:35