11年から始まった、『ももいろクローバーZ 試練の七番勝負』も川上氏の哲学が織り込まれているイベント。各界のエキスパートをゲストに迎え、7日間にわたってメンバーとトークバトルを繰り広げるこのイベントの狙いは、各エキスパートと対峙することによって、自分たちに何が欠けているかをメンバー自身が考えるという、川上氏の理想とする「自分で考えるアイドル」へのステップでもあったという。それ自体をイベントにするという発想もすごいが、実はイベントの元ネタはプロレス。「期待されている若手レスラーがタイプの違う先輩に挑んでいく」ことで、「見世物」としての目線と「教育」「育成」の目線が入り、最上のエンターテイメントになり得るという。ももクロの人気が右肩上がりだった当時だからこそ、このイベントのおもしろみをファンと共有できたのだろう。
また、同じく11年からはファンを性別で分けた「男祭り」「女祭り」、12年からは小学生の子どもとその同伴者しか入場できない「子供祭り」を仕掛けているが、ここにも川上氏のとある狙いが隠れている。それは、「ファンに『不公平を楽しんでほしい』」という思い。自分が入れないイベントほど、その場を想像する。その想像こそが楽しいはず、というのが川上氏の狙いだ。もちろん、他のイベントでは老若男女すべての人が楽しめるようにプランニングしているという。この絶妙なバランス感覚こそ、ファンを飽きさせないポイントだろう。
これらのほかにも、ファンが増え始めた09年には、握手会の時間を短縮するために、ファンを巻き込んでタイムを争う「高速ハイタッチ大会」を企画するなど、ファンもメンバーも楽しみながら興行できるような「発想の転換」を自らに課してきた川上氏。7月には、『ももクロ夏のバカ騒ぎ2014 日産スタジアム大会〜桃神祭〜』が行われる。はたしてここではどのような仕掛けでファンを楽しませてくれるのだろうか。
(江崎理生)
最終更新:2014.07.01 08:03