性加害の問題について「警察が動かなければ報道しづらい」などという声が出ているが、ジャニーズタレントをめぐって警察が動く不祥事が起こっても、テレビ局は信じられない対応をとってきた。たとえば、2001年にSMAPの稲垣吾郎が公務執行妨害と道路交通法違反で警視庁渋谷警察署に現行犯逮捕された際、テレビ局は「稲垣容疑者」ではなく「稲垣メンバー」と報道。2014年にも、当時ジャニーズ事務所に所属していた山下智久が一般人とのトラブルの結果、器物損壊の疑いで警視庁麻布署に書類送検されると、フジテレビは「捜査書類を送付しました」という聞き慣れない表現を用いてこの事件を報じた。
さらに、2018年にTOKIOの山口達也が強制わいせつで書類送検された件では、ジャニーズ事務所が被害者から被害届が出されていることを把握しながら、それを20日あまりも隠蔽したのだが、問題は第一報を報じたNHK。というのも、山口と被害者はNHK・Eテレの番組で共演して知り合っており、NHKは事前に山口の事件を把握していたことは確実であったにもかかわらず、ジャニーズ側の意向を汲んで公表時期をコントロールしたと見られるのだ。
警察が動いた事件でもこの調子なのだから、スキャンダル報道などできるはずもない。それを象徴するのが、後に結婚した岡田准一と宮崎あおいの不倫だ。このスキャンダルは2011年に「週刊文春」がスクープしたのだが、矢口真里やベッキーの不倫については執拗に報じて糾弾したワイドショーが、このときは一切報じず。結婚を公表したときも不倫疑惑にはまったく触れなかった。
ジャニー氏の性加害のみならず、ジャニーズ事務所にとって不都合なタレントの不祥事やスキャンダルについても「沈黙」してきたテレビ局。ようするに、ジャニーズにかんしては、事務所からのGOサインが出ないかぎり「報じない」という思考停止が蔓延ってしまっているのだ。
果たして、明日の記者会見を受けて、こうした思考停止と責任回避の逃げの姿勢を見せているテレビ局に変化は生まれるのか。少なくとも、各局が被害を拡大させたことの責任をしっかりと受け止め、ジャニーズとの歪んだ関係を総括するための検証作業の実施・結果の公表をおこなうことは、マスメディアとしての最低条件だと指摘しておきたい。
(編集部)
最終更新:2023.09.06 03:31