とりわけ、その責任の重さをまったく受け止めようとしていないのが、NHKとテレビ朝日だ。というのも、少なくともNHKとテレ朝は、局内においてジャニー氏の性加害がおこなわれた可能性があるにもかかわらず、その問題をなかったことにしようとしているからだ。
まずNHKは、2000年からジャニーズJr.が出演する『ザ少年倶楽部』(BSプレミアム)を放送。そのため、NHKのリハーサル室はJr.たちのレッスン場となり、番組だけではなくコンサートのリハーサルまでおこなわれ、Jr.のオーディション会場となることもあった。同じようにテレビ朝日でも、1986年放送開始の『ミュージックステーション』にほぼ毎週ジャニーズタレントが出演したり、1998年にはJr.にとって初のゴールデン枠のレギュラー番組となる『8時だJ』を放送。一時はテレ朝局内にジャニーズの稽古場が置かれていた。そして、こうしたレッスン場が“加害の現場”になった可能性が指摘されているのだ。
実際、元Jr.の平本淳也氏は、「外部のレッスン場でジャニー氏が小学生の少年を膝に座らせて股間をいじったりしていた」「みんなそれに対して違和感を持っていなかった」と証言。この証言について、ジャニー氏の性加害問題について追及をおこなっているジャーナリストの松谷創一郎氏は、〈平本氏が目撃したのがテレビ朝日の「レッスン場」かどうかは不明だが、ジャニー氏のそうした行為が常態化していたならば、テレビ朝日の敷地内でも行われていた可能性が高いと想像される〉と指摘している。これはNHKについても同じことが言えるだろう。
つまり、NHKやテレ朝には「局内で性加害がおこなわれた可能性」や「性加害を知りながら黙認した可能性」があり、ジャニー氏と“共犯関係”にあったのではないかという疑念が生じた状態にあるのだ。
ところが、NHKもテレ朝も、調査報告書を受けたコメントではこうした事実に言及することはなく、独自検証の実施も明言しなかった。
それどころか、テレ朝にいたっては、6月末に開催された株主総会において株主がジャニーズ事務所への稽古場の提供について言及したところ、早河洋会長は「固有のプロダクションに貸したとか与えたとかはない」と発言したことを、個人メディアで株主総会レポートなどをおこなっているすずき氏が伝えている。
テレ朝内に稽古場があったことは、それこそ多数のジャニーズタレントたちが思い出話として語ってきた有名な話だ。また、松谷氏はこの早河会長の発言を受け、1995年にジャニーズ事務所がテレ朝の第1リハーサル室でJr.の臨時オーディションをおこなっていたことを示す証拠資料をSNS上に投稿している。ようするに、早河会長は株主総会で嘘をついたというのである。
しかし、早河会長が嘘をついてまで追及から逃れようとしたことは、逆にジャニーズ事務所との関係の闇深さを示しているとも言えるだろう。前述の『Mステ』は芸能プロダクションとの癒着が有名で「テレ朝の天皇」とも呼ばれた皇達也・元取締役制作局長が、ジャニーズと田辺エージェンシーと共同で立ち上げた番組であり、ライバルとなる他事務所の男性グループアイドルが出演できない状況がつづいてきた。また、新社長とも噂されている東山は『サンデーLIVE!!』のメインMCを務めている。今回の調査報告書の公表にかんしても、『報道ステーション』や『羽鳥慎一モーニングショー』などでの扱いは他社と比較しても通り一遍の手ぬるいものだった。