あらためて指摘するまでもないが、その後、オミクロン株による第6波では過去最悪の死亡者数が出る結果となった。そうした危険な状況に陥ることを危惧した人たちの心配の声を、古市氏は「コロナの騒動を長引かせたい人がいるんじゃないか」などと矮小化してきたのである。ところが、古市氏にコロナを軽視したことの反省は皆無。4月28日号の「週刊新潮」(新潮社)に掲載された連載コラムで古市氏は、〈コロナとの共存を訴えてきた知識人には大学に所属していない人が多かった〉として東浩紀氏や三浦瑠麗氏らの名前を挙げ、〈一方で大学から給与をもらう教員からは、例外はあるものの、総じて「緊急事態宣言を出せ、社会を止めろ」という意見が聞こえてきた〉と記述。〈彼らは理屈を並べて、いかにコロナが危険かを説いた。だが心の底に「緊急事態宣言を出してもらえば講義がリモートになる。その方が楽でいい」という気持ちはなかったか〉と批判している。
一体誰を批判しているのか明確ではないが、第6波を警戒した人々は「理屈を並べた」のではなく、この国の医療提供体制や保健所機能が抜本的に強化されず脆弱であるという事実を指摘した上で感染者の急増に危機感を募らせていた。結果、その不安は的中して過去最悪の死亡者数を出してしまったわけだが、にもかかわらず古市氏は「リモートのほうが楽だから緊急事態宣言を出せと言っていたのではないか」などと、あたかも警鐘を鳴らした人たちが邪まな動機を持っていたかのように決めつけたのだ。下劣にもほどがあるだろう。
このほかにも古市氏のコロナ軽視、検査抑制、経済優先による問題発言は枚挙に暇がなく、こうした発言がテレビで垂れ流されてきたことが感染拡大に寄与してきたのではないかと思わざるを得ないほどだ。そんな人物を政府のコロナ対策を検証するメンバーに選んだということは、岸田政権に安倍・菅政権のコロナ対策の失敗を検証する気などさらさらなく、むしろ今後の対策緩和に舵を切るために抜擢したことはミエミエだ。
ともかく、古市氏の抜擢により、今回の有識者によるコロナ対策の検証には何の期待もできないどころか、今後もコロナ失策で繰り返されていくことになることがはっきりしたと言うべきだろう。
(編集部)
最終更新:2022.05.13 11:01