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NHK捏造・虚偽放送問題で河瀬直美監督のコメントが無責任すぎる!ドラマの デモ描写に異議唱えた『相棒』脚本家と大違い

 いや、そもそも河瀨監督は今回の公式記録映画について「光の部分だけを描くのではなく、影を描くことも試されている」などと語ってきたが、五輪反対の運動をおこなってきた市民団体の思いや考えを掘り下げようという態度はまるでなく、デモや抗議の様子を「公式記録映画用の取材」だと許可をとることもなく撮影していたという声もあるほど。それどころか、今回のNHKの番組のなかで河瀨監督は「五輪を招致したのは私たち」などとIOCや組織委員会、政治判断の責任を矮小化させて国民に転嫁させるという醜い発言までおこなっている。ようするに、河瀨監督は権力側の視点からしか五輪を捉えておらず、反対する市民などは「異端」「敵」「非国民」とでも考えているふしさえあるのだ。

 しかも、河瀨監督に対する疑念が深まっているのは、なぜ捏造がおこなわれた証言男性を取材しようと考えたのか、という点だ。

 島田監督が本日公表したコメントによると、〈島田が取材対象を探す中で出会った方で、その場で取材を申し込み、後日、公園でのインタビューをさせて頂きました〉というが、一方、朝日新聞の取材に対するNHKの説明では、男性は撮影当時「過去に(五輪以外の)複数のデモに参加したことがあり、金銭を受け取ったことがある」「今後、五輪反対デモにも参加しようと考えている」といった趣旨の発言をしていたという。

 普通、五輪反対デモの参加者に話を訊こうと考えるのであれば、直接デモの場で参加者に声をかけて取材をオファーするのが確実な手段であるにもかかわらず、五輪反対デモに参加したこともない、さらには過去にデモで金銭を受け取っていたなどおおよそ「一般的なデモ参加者」とは思えないような人物を選び、取材を申し込んだのか。NHKが証言の捏造をおこなったこと以前に、公式記録映画の取材過程のこの時点で、チーム河瀨は「五輪反対デモは金で参加者を動員しているのではないか」という憶測や予断があった、あるいは「そうした証言が取れれば面白い」とでも考えていたとしか思えないのである。

 つまり、『相棒』の制作陣が太田氏の脚本を無視して会社に対し抗議の声をあげる非正規の女性たちをヒステリックに描いたのと同じように、チーム河瀨にも恣意的な意図があり、さらにNHKは証言を捏造するという大きな一線を踏み越えたのではないか。そう考えずにはいられないのだ。

『相棒』の問題を取り上げた11日付の毎日新聞のコラムで小国綾子記者は、〈デモや抗議行動を「うるさい」「意味がない」とバカにし、差別など不当な扱いを受けて怒りや悲しみをあらわにする人を「感情的」とあざ笑う空気は、現実社会にも広がっている。だから脚本も視聴者を意識し、変更されたのではないか〉と指摘していたが、安倍政権以降、テレビのワイドショーなどでは声をあげる人びとへの冷笑を促すようなコメント、番組の構成が増えていった。その行き着く先が今回の捏造問題だとすれば、これはNHKにかぎった問題ではないだろう。

 だからなのか、今回のNHKおよび公式記録映画の監督である河瀨氏に対する大手メディアの追及は、ほとんど見られない。だが、証言を公共放送が捏造したことは、マスコミを揺るがす重大事だ。BPOで審議されることはほぼ間違いないだろうが、それよりも前に、NHKと河瀨監督には、それぞれが取材にいたる過程をはじめとする経過についてしっかり検証をおこない、公の場であきらかにする責任があると強く言っておきたい。

最終更新:2022.01.13 12:25

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