だが、そんななかでも国民感情を逆撫でしてきたのが、安倍元首相だ。
思えば、国内におけるコロナの最初期の「ダイヤモンド・プリンセス号」で死者が出たその夜に、信じがたいことに安倍元首相は自民党の城内実(静岡7区)、池田佳隆(愛知3区)、石川昭政(茨城5区)、長尾敬(大阪14区)、簗和生(栃木3区)、山田賢司(兵庫7区)といった粒ぞろいの極右議員や評論家の金美齢氏と高級鉄板焼き会食をおこなっていたことからも安倍元首相のコロナ軽視ははっきりとしていたが、保護者のフォロー体制も打ち出すことなく唐突に一斉休校を決めたり、ドヤ顔で「アベノマスク」配布を宣言したりと、その無能ぶりを遺憾なく発揮。その上、無神経ぶりを露呈させたのが、国民が苦しい生活を強いられているなか、自宅で優雅にくつろぐ様子を公開した星野源の「うちで踊ろう」便乗コラボ動画問題だろう。
そして、この安倍政権において、とにかく国民の命と健康を守る気がさらさらないという棄民姿勢が鮮明になったのが、前述した「相談・受診の目安」だ。これにより、多くの人が早期に検査・治療を受けられず重症化して死亡するケースを引き起こしたばかりか、先進国ではほとんど類を見ない「PCR検査の抑制」という方針が打ち出され、いまだに「無症状でも、無料でいつでも検査が受けられる」体制はほぼ整備されないままになっている。挙げ句、検査も受けられない上に医療資源も脆弱ななかで、感染拡大を招くことが明白な「GoToキャンペーン」に巨額を注ぎ込んだのだ。
こうした安倍・菅政権のトチ狂ったコロナ対応によって、日本は膨大な犠牲者を出してしまった。欧米と比較して「日本はコロナをかなり抑え込んだ」などと主張する声があるが、同じ東アジア地域の韓国・中国・台湾・香港で比較すると、人口100万人あたりの累計感染者数でも累計死者数でも、日本はワースト1の最悪の状態。コロナ被害と経済被害を数値化して各国のコロナ対応を総合評価したニッセイ基礎研究所による「コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?-50か国ランキング」(2021年5月更新版)でも、中国が1位、香港が9位、韓国が10位と並ぶなか、日本のランキングはぐっと下がって29位となっている。安倍も菅も感染拡大の防止や医療提供体制の拡充もそっちのけで経済を最優先させてきたというのに、近隣地域で比較すると、経済面でも最悪の結果になっているのだ。
他方、ワクチン2回接種率が70%を超えたことを菅政権の成果として評価する声もあるが、接種開始が遅れたことと7月からの国のワクチン供給不足によって接種がペースダウンしたことにより第5波では現役世代の重症化や死亡を招いてしまった責任を忘れてはいけない。つまり、安倍・菅政権のコロナ対応は、あらゆる意味で大失敗だったのだ。