しかし、デタラメだらけのこの大臣をこのままですませていいはずがない。いっておくが、この問題は平井デジタル相が接待を受けながら、「割り勘」と嘘をついていたことだけではないのだ。
平井大臣が、NTTの澤田社長から高級接待を受けたのは、昨年10月2日と12月4日の2回だったが、2回目の接待の直後である28日は、平井大臣率いる内閣官房IT総合戦略室はオリパラアプリの開発・運営の民間委託の入札の公示日だった。そして、公示日の直前である24日、NTTコミュニケーションズに事前に仕様書案を提示し、参考見積の提出を求める優遇措置をとっていたことも判明している。
そして、実際に、オリパラアプリを落札したのはNTTコミュニケーションズを代表幹事とする5社による共同事業体だった。
また、平井大臣は今年5月になってオリパラアプリの事業費減額を打ちだし、「干す」と宣言したNECを外すなどした一方、NTTコミュニケーションズには減額後も全体の6割、約23億円分の受注を確保している。
タイミングを考えれば、この接待が影響を与えていないと考えるほうがおかしい。会食接待問題を「週刊文春」が報じた際、元東京地検特捜部検事である若狭勝弁護士は「会食の場で大臣の職務権限に絡む話が少しでも出ていれば、業者側から具体的なお願い事をしていなくても、単純収賄罪に該当する可能性があります」とコメントしていたが、収賄に当たる可能性は十分ある。
また、平井デジタル相をめぐっては、前述したオリパラアプリの再委託先に、オーナーと親密で株まで持っているIT企業の子会社をねじ込み、優遇した利益相反疑惑もある(詳しくは過去記事参照→https://lite-ra.com/2021/09/post-6005.html)。
まさに、平井デジタル担当相は疑惑だらけなのだ。しかし、総裁選報道が加熱するテレビは「どうせ閣僚が変わるから」とばかりに、本格的な疑惑追及はもちろん、平井デジタル相の醜い嘘だらけの会見すらほとんど伝えていない。
だが、平井デジタル相は菅義偉首相が辞任の意向を発表するより前の9月1日に、テレビ番組で堂々と岸田文雄氏の支持を表明。菅内閣で岸田氏支持を真っ先に明言した人物。つまり、岸田氏が次期総裁・次期首相となった場合、平井氏を据え置きにすることは十分に考えられるのである。
また、仮にデジタル相が変わっても、今回あらわになったデジタル庁の隠蔽体質は絶対に看過できるものではない。平井大臣の言いなりに、接待元の企業名を隠すだけでなく、平井大臣のオンライン定例会議の音声データについて、すでに朝日新聞が公開したパワハラがあったもの以外はすべて廃棄していたことも発覚したのだ。
こんな横暴かつ下劣な人物がデジタル庁のトップである事実ひとつとっても、自民党政権下ではいくら省庁再編・新設したところで利権・不祥事のデパートと化すだけだということがよくわかるというものだが、こうした無責任な大臣をのさばらせてきたのは、疑惑や不正を真正面からただそうとしないメディアの責任も大きい。総裁選のこのタイミングだからこそ、安倍・菅政権下においてわがもの顔で振る舞ってきた大臣の問題をきっちり追及するべきだろう。
(田部祥太)
最終更新:2021.09.27 09:13