いま政治に対して求められているのが情報公開であることは間違いないが、それは国 や為政者にとって都合の悪いデータや情報でもきちんと公開する、ということであるはずだ。だが、河野氏はこのように、ワクチン担当大臣としても科学的根拠に乏しいものや恣意的なデータ引用でも自分にとって好都合な情報は必死に喧伝し、一方で不都合な情報は隠蔽してきた。
いや、河野氏のこれまでの態度や言動からも、その政治スタイルは独断専行の密室政治だ。ようするに、安倍・菅政権と何ら変わらない「隠蔽、改ざん、捏造」政治なのである。
実際、河野氏が安倍・菅政権と同じ体質であることは、きょうの会見にも表れていた。本日の河野氏による出馬表明会見は16時にスタートしたが、最初から、その後に予定があることを理由に17時までと時間が区切られ(結果的に少し延長はされたが)、質問の回答に対する再質問、いわゆる更問いもシャットアウトした。
この河野氏の会見への態度に対しては、菅首相の会見でも鋭い質問を放ってきたイギリスの軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員の高橋浩祐記者が「総理大臣になられたら再質問はOKにするとか、ネットメディアも入れるようにするとか、少し改革してもらえないか」と要請。だが、河野氏の回答は、このようなものだった。
「あの、国民としっかりと対話ができるようなスタイルをとっていきたいと思っています。それは記者会見もあるでしょうし、直接国民に語りかける、あるいはネットを通じてやりとりをする、さまざまな方法があるんだと思います」
記者の質問に幅広く最後まで答えてほしいという要望だったのに、首相会見のあり方には踏み込まず、「直接国民に語りかける」「ネットでやりとりする方法もある」などと言い出すとは……。河野氏といえば、自分を批判しそうなユーザーをことごとくブロックしている上、7日の閣議後会見でその問題を問われると「実際に通りすがりの見知らぬ人を罵倒しないと思うが、SNS上ではそういうことが頻繁に起きている」と言ってブロックを正当化したばかり。国民による政策批判を「罵倒」などと言い募る政治家がネット上で国民とやりとりしても、それはたんなるファンミーティングになり、批判的な国民はアンチとして出禁にされるのがオチだろう。
「国民と情報を共有する」「国民と対話していく」と言いながら、批判や記者からの質問はシャットアウトし、都合の悪い話は隠蔽する。会見では、ジャーナリストの横田一氏から「安倍さんへの忖度政権になるのではないのか」「安倍・麻生の長老支配を打ち破る考えは」と問われると、「河野太郎として日本を引っ張ってまいりたい」などと答えていたが、この男が首相になっても、独断専行のポピュリズム政治が横行し、新自由主義政策によって格差が拡大していくという安倍・菅政治がつづいていくことになるだけだと言っておきたい。
(野尻民夫)
最終更新:2021.09.10 11:06