いったい何様のつもりなのかと言うほかないが、酒を提供する飲食店ばかり狙い撃ちにして感染防止対策を放棄してきた菅政権の背景には、このような「鉄槌」という考え方があるということなのだろう。
だが、岡部氏の危険な発言はこれだけではない。ワクチン接種が進んで制限を緩和した結果、再び感染拡大を招いているイギリスの例を踏まえ、緩和策について「一斉に舵を切るというやり方には、賛成できません」としつつも、岡部氏はこう述べている。
「制限を全面解除したイギリスのやり方には批判もありますが、僕は基本的な考え方としては、あのやり方は悪くないと思っています。でもそれをやるにはある程度の割り切りも必要です」
「その割り切りを一般の人も理解してくれないといけません。どこかで一人亡くなったとか、学校でクラスターが出たなどがある度に、「責任追及」という声が社会で大きくなるのだとすれば、緩和などできません」
感染防止策の緩和によって死亡者やクラスターが発生すれば対策の精査・見直しの検討をおこなうのは当然の話だ。だが、岡部氏はそれを「責任追及」などという言葉にすり替え、あたかも不条理な集団ヒステリーであるかのように扱うのだ。
さらに、デルタ株よりも感染力が強く、ワクチンが効きにくいとも言われているラムダ株について「どこまで広がりそうか」と問われると、岡部氏は信じられないようなことを語り出すのだ。
「現時点ではわかりません。アルファ株の時もみんな心配していましたが、結果的には大したことはありませんでした。でもそうこう言っているうちにデルタ株が出てきたわけです」
「アルファ株は大したことなかった」って、正気か。アルファ株によって感染が拡大した第4波で大阪は深刻な医療崩壊に陥り、5月だけで死亡者は859人、医療にかかることもなく自宅で亡くなった人は19人にものぼった。その事実を「大したことなかった」と、内閣官房参与が発言したのだ。これは辞任に追い込まれた高橋氏の「さざ波」発言とまったく同じではないか。
また、この「大したことなかった」発言が問題なのは、ラムダ株について問われた際に飛び出た発言だということだ。ラムダ株は五輪開会式当日に五輪関係者から国内ではじめて確認されていたというのに、政府はその事実を海外メディアに追及されるまで2週間も隠蔽していたが、岡部氏はその問題に言及することもなく、まるでラムダ株も“大したことないかもしれない”という含みをもたせているのだ。