そもそも6月はじめ頃までは「中止」を主張するメディアやコメントは珍しくなかったが、6月なかば、G7サミットの共同声明に五輪開催支持が組み込まれ、6月21日、5者協議で「上限1万人の有観客開催」が決まると、議論は「開催か中止か」ではなく「有観客か無観客か」「どう安全に開催するか」にすり替えられ、国内マスコミでは「五輪中止論」は急速にしぼんでいき、ほとんどの新聞やテレビは五輪中止に言及することをやめてしまった。そんななかコロナ下での五輪開催に異論を唱え続けたのは、テレビでは『バイキング』、新聞では東京新聞くらいだった。
時期の違いはあれど、おそらくは他番組でも、「もう開催されることは決まったんだし」「うちの局も五輪中継するから」「反対するのではなく、どう安全に開催するかを建設的に議論すべき」などという意見がまかり通り、反対論が封じられていったのだろう。
そう考えると、「最後まで絶対諦めず戦った」という坂上の姿勢は大したものだろう。坂上は以前も、『バイキング』での政権批判がフジテレビ上層部から問題視され、批判潰しのためパワハラ告発され降ろされそうになったことがあったが、そのときも徹底抗戦していた。
春日氏の証言どおり、実際、『バイキング』は開催1週間前も五輪に対する批判姿勢は変わらず、開会式を夜に控えた7月23日放送でも、他番組が試合の始まったサッカーやソフトボールの試合やブルーインパルスに大はしゃぎするなか、小林賢太郎解任問題や五輪関係者の感染、五輪の感染対策の杜撰さなどを批判していた。
春日氏は「始まったらどうなるのかと思っていたら、坂上さん夏休み。その手があったか」と、坂上を小バカにしていたが、復帰した4日、5日の放送を見れば、その今夏開催反対の姿勢はまったく変わっていないどころか、感染拡大を受けさらに厳しく批判している。
しかし、『バイキング』や坂上のような姿勢はあくまで例外にすぎない。