テレビや新聞の一面ばかりを見ていると、まるでコロナが終わったかのような錯覚を覚えてくるが、それは錯覚にすぎない。
冒頭にきょうの東京都の新規感染者がきょう、2848人と過去最多になったことをお伝えしたが、この数字は開会前から予測されていた。開会式のあった23日から4連休のあいだも新規感染者は連日1000人を超え、緊急事態宣言下にもかかわらず感染拡大が収まる気配はなく、これまで以上に加速度的に増加する一方だ。
これは明らかに五輪強行開催の影響だ。政府や組織委は、自粛疲れや気の緩みで人流が収まらないためなどと国民に責任転嫁するだろうが、緊急事態宣言下にもかかわらず人々の行動変容につながっていないのは、不十分な補償もさることながら、五輪開催が人流抑制に逆行するメッセージとなっているからだ。
しかも、あれだけ「安全安心」を訴えていたはずの組織委は、濃厚接触者の試合出場を認めたり、毎日検査のルールを反故にしたり、さらには無症状陽性者を7日で復帰させようという案まで浮上させ、感染防止どころか、逆に世界中に感染を拡大させるようなことばかりしている。
このまま五輪を続行すれば、被害は甚大なものになるだろう。
実際、この間、専門家からは五輪中止を求める声が上がり続けている。たとえば、“8割おじさん”こと西浦博・京都大学教授は、五輪開会式翌日の7月24日にツイッターで、オリンピック中断を訴えている。
〈都内受入病院の状況聴取で悲鳴。入院調整中の患者が増加して収容能力を超え始めている。今後、呼吸苦があっても自宅療養で待つ者が増加し、自宅で重症化する人が出る。ここから待つと状況悪化を懸念するため、この時点でオリンピックを中断し、都内で外出自粛を徹底することを提案します。〉
また、政府の新型コロナウイルス対策分科会メンバーで大会組織委員会の感染症対策にあたる専門家会議の座長を務める岡部信彦・内閣官房参与ですら、「東京都で入院すべき人が入院できないような状況になったら大会の中止も考えるべき」(朝日新聞15日付)と訴え、開会式翌日の24日にも『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ)に出演し、「重症の患者さんが引き受けられない状況で同時に並行して(五輪を)やるっていうのは、非常に難しいんじゃないか」「入院できないような状況がたくさん見られる所では大会の中止は視点に入れるべき」とあらためて主張。「専門家が中止の基準を示していない」などと専門家攻撃に転嫁しようとした橋下徹・元大阪市長に対して、「わかりやすさでいえば、大阪のような状況が出てきたならば、中止も検討しないといけないのは私の意見です」とキッパリ返していた。