さらに、呆れ果てたのが、この醜いスポンサーファーストを、子どもたちにも押しつけていることだ。
聖火リレーでは、走者の後方を走る「サポートランナー」に中学生などを参加させている地域があるのだが、そのサポートランナーの中学生に、スポンサーである運動具メーカー・ASICS(アシックス)の製品を着用することを強要しているのだ。
たとえば、神奈川県藤沢市では、同市教育委員会が市内中学校長などに対し、教育総務課長と東京オリンピック・パラリンピック開催準備室長連名の文書を送付し、サポートランナーとして各校生徒1人を選出するよう依頼。そのなかで、留意事項として、生徒の服・靴・帽子は、東京五輪・パラリンピックのスポンサー企業の製品か、他社製の場合、ロゴマークなどの印字や刺しゅうが見えない物などに限るとして、対応できない場合はテープなどでロゴなどを隠すよう指示していたことが判明した。
この教育委員会の指示については、市民団体が批判していたが、当然だろう。コロナ下で密になる聖火リレーに子どもを参加せようということ自体が問題なのはもちろん、教育委員会が子どもにスポンサー製品の使用強要までするとは、権力や金を持っている者を忖度するような人間を育てようとしているのかと言いたくなる。
いずれにしても、こうした聖火リレーの実態を見れば、「平和の祭典」だの「復興への思いをつなぐ」だのといった美辞麗句が嘘っぱちで、その本質はスポンサーのための「カネまみれ」イベントでしかないことがよくわかるだろう。
そもそも、聖火リレーはオリンピックの伝統でもなんでもなく、ナチスドイツがアーリア人の優越性を喧伝するためにベルリン五輪ではじめたものであるため、その実施には以前から強い批判の声が上がっていた。しかも、そこに、金権・商業主義の要素が加わって、コロナ禍で国民や子どもまで巻き込み、感染の危険にさらしているのだ。
オリンピック・パラリンピックの中止はもちろんだが、その前に、まず聖火リレーという、この危険な拝金イベントを中止すべきだろう。
(伊勢崎馨)
最終更新:2021.06.05 06:32