一方、イモトアヤコの辞退をめぐっては、前述したように、イモトの所属事務所であるワタナベエンターテインメント(ナベプロ)から、圧力があったことを、平井知事が明かした。
イモトがランナーを辞退することが初めて公になったのは、4月22日午前の平井知事の定例会見でのこと。平井知事はこの会見で、聖火リレーでのコロナ対策として、ルート短縮、観客制限、著名人ランナーは公道を走らない、などの見直しを報告。それに続けて、イモトと森下元選手の辞退も発表した。いずれもランナーサイドからの辞退だったとして、その理由をこう説明した。
「2人の著名人ランナーのサイドのほうからは、越境してこういう鳥取に来るということに対する懸念を感じていますというお話とか、それから所用があってもともといろんなスケジュールのおありの方々でありまして、所用があって辞退というようなお話もいただきました」
イモト辞退はすぐ大きく報じられ、感染拡大防止に対する配慮には賞賛の声が上がった。ところが、その日の午後になって一転、鳥取県の担当者が「県が大会組織委員会を通じて事務所に辞退を要請した」と平井知事の会見での説明を誤りだったと訂正。イモトも自身のインスタグラムで〈今回『鳥取県実行委員会からの感染拡大の懸念により著名人の公道走行は御遠慮頂きたい』と要請があったこともあり、このような決断させて頂きました〉と説明した。
それを受け、メディアが「イモトさん、リレー辞退理由訂正 鳥取県の当初説明は誤り」と報じると、鳥取県には「嘘つき」などと非難の声が上がった。
しかし、5月20日の平井知事の会見によると、辞退はやはりイモト、ナベプロ側からの申し出によるものだったのだが、ナベプロ幹部の「恫喝」で無理やり鳥取県側が要請していたことに訂正させられてしまったのだという。
平井知事によると、鳥取県は島根県知事の聖火リレー中止発言を受け、3月から聖火リレーの見直しを検討し始めたのだが、そもそもそれ以前の段階ですでにイモトは組織委を通じて聖火ランナー辞退を申し入れていた。理由は「スケジュールの都合」。県は組織委か事務所が辞退を発表するのだろうと待っていたが、一向に発表されない。聖火リレーに関し最終決定する実行委員会を迎えてもまだイモトの名前は残ったまま。困った鳥取県は、関係者と打ち合わせた上で、4月22日の平井知事の会見でイモトの辞退を発表したのだという。
ところが、ナベプロはこの発表に激怒し、信じられないような行動に出る。平井知事はその状況について、5月20日会見でこう説明した。
「その(4月22日)昼休みに、担当者が血相を変えて私の部屋にやってきたんですね。事務所のお偉いさんが怒っていますと、こういう言葉でありまして、その表情を見て私は顔面の顔色を失っていますし、体も声も震えたような形でございまして、これは恫喝されたなと思いました。それで、そういうようなことで、いったいどういうことにその後なったかというと、それは皆さんの御案内のとおりで、私は、実はそこはあまり深くは立ち入っていませんが、結局、前日の実行委員会の後、鳥取県が辞退をお願いをした。それに応じて辞退をした。こういうことでストーリーが変えられていたんですね。」
結局、ナベプロ側の要望により、担当者は知事の会見での説明を誤りだったとして「前日の実行委員会の後、鳥取県が辞退をお願いをした。それに応じて辞退をした」と一転させたのだ。