緊張感もへったくれもない、このトホホな対策……。その上、この状況下で政府は「GoToトラベル」の代わりに「地域観光事業支援」を昨日から開始。感染状況が「ステージ2」以下の都道府県を対象として1泊当たり最大7000円を国が補助するものだが、感染が指数関数的で急増する変異株の脅威を見ていながら、またもブレーキとアクセルを同時に踏もうというのである。
とてもじゃないが、「まん防」ごときでこの状況が好転するとは到底思えない。いや、今後さらに状況は悪化していくのは間違いない。
というのも、今回、菅首相は東京都を対象地域に含まなかったが、都のモニタリング会議では「第3波を超える感染拡大が危惧される」「通常の医療が大きく制限されていると思われる」「医療提供体制の逼迫が憂慮される」という指摘がなされている。新規感染者数は大阪府のほうが上回っているが、これは以前にも指摘したように、東京都の検査数が少ないせいであって、すでに同じような状況にある可能性が高い。そして、東京の感染爆発はあっという間に首都圏や地方に広がっていく。そんなことはわかりきっているというのに、菅首相は何の手も打たなかったのだ。
しかも、国民に危機感を伝えるべき状況であることは明らかなのに、「情報発信の強化」を謳っていたはずの菅首相は昨晩も会見をおこなわず、ぶら下がりで済ませてしまった。その一方、同夜には経済情報をメインにした『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)の単独VTRインタビューに応じ、コロナ対策の話もそこそこに「こども庁」の設立だの「4月解散論」の否定だのを語ったのだった。
コロナ対策の先頭に立つ人間がこの調子では、1カ月後、年末年始にこの国を襲った光景が再び繰り返されることになっても不思議はないだろう。
(水井多賀子)
最終更新:2021.04.02 10:26