夫婦別姓の問題だけではない。丸川氏は、「女性」であり「出産・子育て経験者」だが、いまの社会のなかで女性がどうすれば生きやすくなるかといった視点をまったくと言っていいほど持ち合わせておらず、むしろ「自己責任」を唱えてきた。
象徴的なのは2010年、民主党政権が進めた子ども手当法案が委員会採決された際、「この愚か者めが!」「このくだらん選択をしたバカ者どもを絶対忘れん!」と大声でヤジを飛ばした一件だが、環境相時代の2015年にもNHK『日曜討論』で少子化対策を問われ、「家族をどうやって増やしていくかというか、きちんと絆をもっていくかが、これからのカギ」などと発言。司会者から「その家族が実際なかなか増えていない。支援策としてはどうか」と再質問されても、「何より地域の絆ですね。家族を周りで取りまいている地域の絆、しっかりまた強くしていくのは大事なこと」と述べていた。
“国からの子育て支援策に甘えるな。家族や地域の力を借りてどうにかしろ”とは、まさしく「自助」を振りかざす菅首相とも通ずる自己責任論だが、このような主張をする人物が男女共同参画や女性活躍を担当する大臣にふさわしいはずがない。
その上、丸川氏は五輪担当相としても、過去に信じられない答弁をおこなっている。
それは、2017年1月31日参院予算委員会でのこと。この日の審議では、東京五輪でゴルフ競技の会場となっている霞ヶ関カンツリー倶楽部では女性が正会員になれず、さらには女性は原則日曜日にプレーできないことから「オリンピック憲章に反する女性差別ではないか」と問題になったのだが、答弁に立った丸川五輪担当相はこんなことを言い出したのだ。
「スポーツや教育の分野では、男性または女性のみに資格が認められることが不合理とはされていない部分が事実として存在する」
女性という属性を根拠に正会員として認めない、日曜はプレーさせないというのは疑いようもない性差別そのものだというのに、丸川五輪担当相はそれを認めようとはしなかったのである。
どうしてこんな人物が、しかも日本の性差別とジェンダー平等への問題意識の低さが国内外から注目されているなかで五輪担当相に再任するのか、まったく意味がわからないが、丸川氏が五輪担当相として不適格である理由はもうひとつある。
じつは、丸川氏はヘイトスピーチまがいのデマ発言まで口にしているのだ。
「WiLL」(ワック)2011年3月号に掲載された故・渡部昇一氏との対談では、民主党政権が前年に導入した子ども手当について、渡部氏の「(子ども手当を目当てに)中国人や韓国人が役所へやってきて、一人で数十人も申請するようなケースが出てきてしまった」というデマ丸出しの主張に丸乗りし、丸川氏は「子ども手当は、子供が日本国内に住所を有せず、かつ日本国民でない場合は支給しない」という条項をつければ「あのような事態は未然に防ぐことができたんです」などとヘイトスピーチまがいのデマを言いふらしていた。
「平和の祭典」を標榜する五輪の開催国代表が、ヘイトスピーチまがいのデマを堂々と吹聴していた──。あらゆる意味で国際的に「即アウト」の人選ではないか。