しかし、このように「デジタル後進国」ぶりが次々に明らかになっているというのに、菅首相はまったく現実に目を向けようとはせず、そればかりか「逆ギレ」までしてみせたのだ。
17日の衆院予算委員会で、HER-SYSが使い物にならず新規感染者数などを厚労省が手集計しているという事実について問われた際、菅首相は平然と「コロナが発生してからずっとそのような集計していることは承知している」と答弁。「デジタル化」「デジタル化」とバカの一つ覚えのように繰り返してきた張本人が、肝心のコロナ対策でいまだに情報の一元化さえ図れていないことを放置していたと悪びれるふうもなく認めたのだが、問題はその後の答弁だ。
いかに菅政権のデジタル化が進んでいないかが尾辻議員の質疑でコッテリとあぶり出されたあと、同じく立憲の田嶋要衆院議員が質疑に立ったのだが、田嶋議員は菅政権の「2050年カーボンニュートラル宣言」を評価しながらも、他の先進国にくらべて日本では自然エネルギーの導入が遅れていることなどを指摘。すると、答弁に立った菅首相は、怒気を帯びた声で、こんなことを言い出したのである。
「デジタルにしろ、グリーン(エネルギー)にしろ、まったく進んでなかったじゃないですか! 私自身がデジタル庁をつくると、言ってるじゃないですか。グリーンもそうですよ。ですから、進んでなかったことをやろうということですから、それはぜひ協力してくださいよ!」
デジタルの問題を直接訊かれたわけでもないのに、突然の逆ギレ……。しかも、「私が総理になるまでデジタル化はまったく進んでいなかっただろ!」って、紛れもない壮大な安倍政権の否定だが、自分もその政権の中枢にいたのに何をやってきたのかという話だ。だいたい、菅政権になってもデジタル化が進んでいない実態を放置してきたのに、何を言っているのだか。
しかも、苦笑いせざるを得ないのは、「私自身がデジタル庁をつくると、言ってるじゃないですか」という一言だろう。デジタル庁をつくったところで中身が伴わなくては何の意味もないが、こんなことを言い出すということは、菅首相が「箱をつくればなんとかなる」と安易に考えている証拠だ。
こんな体たらくでは、肝いりのデジタル庁が創設されたところで、この国のデジタル化は夢のまた夢。来年のいまごろも手集計で感染者数をカウントするという情けない光景が繰り広げられている可能性すらある。まさに「とほほ」というほかないだろう。
(編集部)
(編集部)
最終更新:2021.02.19 11:01