もちろん、その批判は三浦氏だけでなく三浦氏をCMに起用したアマゾンにも向けられて当然だろう。メンタリストのDaiGoらは前述したように、解約運動を「CM起用タレントで購入判断をしている時点で終わっている」などと攻撃しているが、その考え方こそ「終わっている」。
むしろ、いまは「エシカル消費」という言葉に象徴されるように、企業の社会貢献や社会問題に対する意思表示が、人々の消費行動において、商品そのものと同様に重視されている時代なのだ。
CM出演者の人選やCM内容、出稿先の選定にも、その企業の思想が反映されているとして注目を集めるようになっている。
たとえば、P&GがパンテーンのCMに、有村架純や今田美桜という定番の若い女性とともに、黒柳徹子やりゅうちぇるを起用したのは、年齢やジェンダーにとらわれないというブランドイメージを打ち出すためだろう。あるいは、カルバン・クラインが伊藤詩織氏を起用したことがあるが、それは抑圧と沈黙を強いられがちな性暴力被害に声を上げ続けた伊藤氏の姿勢を通じて、女性のエンパワーメントや声を上げることを後押ししていくというメッセージだし、渡辺直美が海外のファッションブランドに起用されるのはルッキズムへのアンチテーゼの意思表示だし、大坂なおみや八村塁が多くの世界的ブランドに起用されるのは多様性のアピールのためだ。
逆に、アマゾンが安倍政権の有識者会議にも参加する国際政治学者の三浦氏をCMに起用したということは、「アベノマスク」を手放しで賞賛し、「スリーパセル」発言で民族差別を扇動するようなそのスタンスを肯定したということでもある。
だとしたら、三浦氏の政権べったりの姿勢や差別性に否定的な人たちが一斉に批判の声を上げるのは、当然だろう。そして、その表現の手段として不買運動や解約運動という方法をとることも極めて真っ当だ。不買運動は選挙やデモ、ストライキと同様に、民主主義社会における重要な意思表示なのである。
アメリカでは、多くの企業がBlack Lives Matter運動を支持し反差別のメッセージを打ち出したが、これは消費者がそうした運動を積み重ねてきた結果だ。
そういう意味では、日本でもこうした企業の姿勢を問う運動をこれからもっと盛り上げていくべきだろう。それは弱者が強者の専横と差別に抵抗するための最後に残された有効な手段になるかもしれない。
(酒井まど)
最終更新:2020.12.31 07:01