しかも、松井市長は財政局長の会見後の囲み取材で、「(財政局は)毎日新聞の圧力、プレッシャーで、毎日新聞の趣旨に沿って数字を出した」などと発言。毎日の記者が「圧力なんてかけられるわけがない」と抗議していたが、これは松井市長の発言のほうが明らかに嘘だ。
大阪市財政局が出した試算数字は、毎日新聞の取材以前に、複数の新聞社が大阪市に公表を求めており、財政局はすでに試算を始めていた。
「今回、毎日の記者は財政局側が試算できると知ったので、ごく普通に数字を出してほしいと申し入れただけのようだ。にもかかわらず松井市長があんなことを言っているのは、財政局側が客観的に計算していたことを否定したいためだろう」(在阪マスコミ記者)
しかも、毎日新聞が取材した際、市財政局は公表の理由について「4特別区の行政コストを考える一つの目安になる」と答えていた。
そして、記事が出て維新や応援団から攻撃を受けた後も、27日の財政局長の会見で毎日新聞の記者が自社の記事について間違いがあるか質したところ、財政局長は「きちっと記事を書いてある」と答えていたという。
ところが、28日になって、大阪市はHPに釈明文を掲載(現在は削除)。それでも足りないと、松井市長に恫喝されて、会見で「虚偽、捏造」と発言せざるをえなくなったのである。
そのやり口は恐怖政治としか言いようがないが、さらに問題なのは、松井市長や維新の政治家が「捏造」「大誤報」などとわめいている大阪市財政局の出した数字や毎日の記事が「虚偽」でもなんでもないことだ。
大阪市財政局が出した218億円増という数字は、大阪市の2020年度の基準財政需要額、特別区の数である4等分した人口に基づいて分割、計算した数値に基づいており、何の間違いもない。もちろん実際の行政コスト増とはズレが生じるが、毎日新聞の記事にもその旨はきちんと書いてあるし、自治体の規模が小さくなってスケールメリットが失われると、当然、人口当たりの負担は増すわけだから、近い数値になる。都構想の行政負担増の構造を説明するのに適したデータと言えるだろう。
大阪府立大の住友陽文教授がツイッターでこう喝破していたが、そのとおりだ。
〈無い計算式をデッチ上げたとか、根拠のない数字を出したのなら問題だが、大阪市財政局は人口を根拠に計算して出したのだから、どこにも誤りはない。そういう根拠で出した「218億円」を毎日新聞は正しく伝えた。どこに「捏造」があり、どこに「誤報」があるのか。そういうことを拡散する政治家が問題。〉