しかも、本当に菅首相が105人のリストを「見ていない」としたら、これは日本学術会議法の7条と17条で定められている「日本学術会議が会員の候補者を選考し、その推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」という規定に反する違法行為となるのだ。
いや、それだけではない。もし、菅首相が「見ていない」としたら、6人を外したのは内閣府の職員、あるいは前回2017年の改選時に人事介入をおこなっていた杉田和博官房副長官といった官邸の人物ということになるだろうが、これもとんでもない話だ。なぜなら、任命権があるのは総理大臣であり、裁量が認められていない人物が総理大臣への提示もなくリストから勝手に推薦候補者6人を外したとすれば、これもまた法を犯した越権行為であり、さらにはまたしても公文書の改ざんを働いたことになるのである。
6人を任命拒否した時点ですでに違法なのだが、それをごまかすのに「見ていない」などと言い出したものの、それもまた違法にあたる──。だが、「見ていない」というのはあきらかなウソだ。
たとえば、立憲民主党の蓮舫参院議員は、〈私たちのヒアリングで担当者は99人の名簿と、日本学術会議からの推薦105人名簿をあわせて添付し菅総理まで決裁があがっていると説明され、その資料もいただいています〉とツイート。実際、10月6日におこなわれた野党合同ヒアリングには、内閣府が「日本学術会議会員の任命について」という6人が排除され99人の名前が記載された9月24日起案、9月28日に菅首相が決裁した文書を提出しており、そこには〈日本学術会議会員候補者推薦書(105名)〉という文書も添えられていた(ちなみに野党への提出時には6人の名前は黒塗りにされている)。
また、10月2日の野党合同ヒアリングでは、担当者である内閣府大臣官房の矢作修己・人事課参事官が「決裁文書には日本学術会議からの推薦文書も付けますので、そこには105人のリストが載っている」と答えている。
この説明どおりなら、6人が排除される前のこの推薦書も菅首相に渡っていたということになり、「見ていない」という言い分は通用しなくなるのだ。