しかし、問題なのは、こうしたヨタ記事が出てくる背景だ。実は、小泉が共産党からの出馬を示唆され、バッシングを受けたのは今回に始まったことではない。
6月には、「週刊新潮」(新潮社)が「赤旗1面で利用される『小泉今日子』の政治的打算」というタイトルの記事を掲載した。「しんぶん赤旗」5月31日付に小泉と劇作家の渡辺えりの対談が掲載されたことを受けて、共産党が小泉を政治利用することを狙っており、小泉も政界に色気を見せているかのように書き立てたのだ。
同記事では、大手プロダクションのバーニングと袂を分かち、プロデュース業に力入れている小泉だが、〈なんてたって元アイドル、スポットライトが恋しくないはずがない〉として、芸能レポーターのこんなコメントを掲載している。
「小泉さんが政治的な発言をするのは『新しいキョンキョン像』を模索しているからだと思います。赤旗への登場はまさに彼女の新しい1面。これをきっかけに参院選に出馬してほしいと持ち掛けてくる政党も出てくるでしょね」
このときもやはり、ネトウヨからの執拗な攻撃や“共産党員認定“がさかんに行なわれたが、これ、ある意味、『アサ芸』よりひどい記事だ。「新潮」は小泉が「赤旗」に登場したことを鬼の首を取ったように騒ぎ立てていたが、そもそもこの対談で小泉は政権批判や政治的な問題を口にしたわけではない。コロナ禍にあって、渡辺とともに映画や演劇などエンタテイメント界への支援を訴えただけだ。
また、「しんぶん赤旗」には小泉に限らず、これまでにも様々な芸能人が登場してインタビューを受けている。たとえば嵐の相葉雅紀や藤原紀香、長谷川博己、黒木華、東出昌大、元AKB48の内山奈月、またスポーツ界からも幅広い人材が登場しているが、彼らはごく普通の人物インタビューや映画や演劇の作品について語っているだけで、共産党とは何の関係もないし、実際、登場した後も「共産党員」扱いされたり「共産党からの出馬」説を書き立てられたりはしてはいない。
にもかかわらず、「週刊新潮」は小泉の「赤旗」登場だけをクローズアップして、あたかも政界を狙っているかのようなトーンで揶揄したのだ。しかも、「政治的な発言をしているのは『新しいキョンキョン像の模索』」とか「スポットライトが恋しい」とかテキトーにもほどがある。
小泉のツイートを見ていればよくわかるが、彼女は自己顕示欲や将来の政界進出などのために政治的発言をしているわけではない。むしろ、そのトーンは抑制的で、なるべく政治的なことにコミットしたくないが、今の安倍政権を見ていると言わずにはいられない、という思いが伝わっている。しかも、自由を勝ち取るために大手事務所のバーニングプロをやめ、筋を通すため自ら豊原功補との関係を明かしたほどの覚悟を持った彼女が「スポットライトが恋しい」とか言うわけがないだろう。