さらに、司会の石井亮次が「(熱中症には)ほんとうに注意が必要」と言うと、再び橋下は口をはさみ、こう畳み掛けたのである。
「我々いま言ったように『注意が必要だ』しか言わないわけでね、じゃあこれだけの死者が出てるんだったら政府をあげて熱中症で死亡者が出ないように総力をあげて、何十兆円のお金をかけてね、対策をやるのかと言ったら、やらないわけじゃないですか。だからやっぱりこれは死者は抑えなくてはいけないけれども、何事もバランスが必要だと思いますよ」
つまり、橋下氏は熱中症の話題と新型コロナを無理やり結びつけ、“熱中症では注意喚起する程度で、死亡者が出ることを受けて入れているのだから、コロナもバランスが必要”などと言い出したのだ。
端的に言ってバカなんじゃないだろうか。小学生でもわかる話だが、新型コロナは熱中症とは違って人から人にうつる伝染性の感染症だ。だからこそ、国は防疫・検疫に総力をあげて取り組まなくてはならない。元府知事であるというのに、そんなこともわかっていないのか……。
さすがにこの橋下氏の発言には、石塚元章・CBC特別解説委員が「ひとつだけ追加で言うと、熱中症は感染しないけど、コロナは感染するんで」「コロナは抑えておかないとその人が大丈夫でもほかに感染るかもしれないけれど、熱中症は感染らないので」と控えめにツッコんでいたが、このツッコミを受けても橋下氏は、こう強弁し続けた。
「感染らないんであれば対策はやりやすいんですよ。感染らないんだったら。だけどそこには政府をあげて、日本の総力をあげて『熱中症で死者は絶対に出しません!』って、対策本部立ち上がってないじゃないですか。これ毎年ですよ」
“対策やりやすいのに対策本部を立ててない”って、対策本部は対策がやりやすいかどうかで決めるものではない。むしろ、行政は対策が立てにくい困難な問題こそ率先して取り組むべきだ。いくら、「熱中症は感染症ではない」というツッコミで答えに窮したとはいえ、でまかせにもほどがある。それとも、これ、橋下氏が知事や市長時代、対策を立てやすくてすぐに得点を稼げる政策しかやらなかったことを自らゲロったのか。
というか、そもそも「熱中症だって対策していないんだから、新型コロナ対策も必要がない」という橋下氏の論の立て方そのものがおかしいのだ。もし「熱中症対策がされていない」と感じたのだとしたら、熱中症対策にもきちんと取り組め、と主張すべきではないのか。
実際、熱中症対策も気候変動対策も国をあげて必要なものだ。一部自治体がすでにはじめているように、生活が苦しい世帯に向けて冷房器具購入を補助するなどの対策が必要だし、年々被害が大きくなっている熱中症や豪雨水害などは地球温暖化による気候変動の影響が指摘されている。この気候変動問題が国をあげて取り組むべき喫緊の課題であることは言うまでもない。