だが、電通はこれだけ儲けておきながら、経産省の「家賃支援給付金」事業をめぐってライバル会社の“妨害工作”をおこなっていたことまでわかっている。「文春デジタル」によると、「持続化給付金」事業で電通子会社から外注を請け負っているTOWの社員が5月24日、同事業事務局のSlack内で、下請け企業の担当者にこんな文面を一斉送信していたというのだ。
〈今後電通がある理由で受託に乗り出さないコロナ対策支援策があります。具体的には家賃補助の給付事業です。この話は電通がやりたくない、かつ中企庁もいろんなところに相談をして全て断られ、最終的に博報堂が受注の可能性があるものになりそうです。〉
〈そのため、電通傘下で本事業にかかわった会社が、この博報堂受託事業に協力をした場合、給付金、補助金のノウハウ流出ととらえ言葉を選らばないと出禁レベルの対応をするとなりました。〉
〈当然ですが弊社が協力をお願いした皆様にもすいませんが、強制的にお願いしたい次第です。〉
「博報堂には協力したら出禁」「強制的にお願いしたい」──あまりにも露骨な恫喝だが、この圧力をかけるための文面は、電通の「持続化給付金」事業を担当していた管理職の社員がTOWの社員に発言し、それをTOWの社員がまとめ、下請け企業の担当者に送っていたのである(朝日新聞デジタル6月29日付)。
この恫喝メッセージが送信された2日前である5月22日には、決算行政監視委員会で立憲民主党の川内博史衆院議員が「持続化給付金」の電通再委託問題をはじめて指摘、追及をおこなっており、それを受けて電通は〈受託に乗り出さない〉と判断した可能性が高いだろう。
自分たちに疑惑追及の手が伸びそうだと察知した途端に、博報堂の仕事を妨げようと恫喝をかける──。しかも、この「家賃支援給付金」事業の入札では、評価指標の「等級」で博報堂がAだったにもかかわらず、Cだったリクルートが落札。ここでも経産省と電通の癒着関係が影響を及ぼした可能性があるのだ。
経産省を筆頭とする官公庁との深い関係によって巨額の税金が電通に流れているのではないかという疑惑のみならず、その関係が他の事業にまで不正を生み出しているのではないか。こうした疑念を持たれるのは当然の話だが、しかし、電通は“下請け企業への恫喝メッセージ”問題が発覚しても、当該社員の処分を発表しただけで、会見を開いて説明することさえおこなわなかったのだ。
しかも、昨日の決算にかんする会見でも、この問題について質問も飛んだが、曽我取締役CFOはその質問を遮ったという(朝日新聞デジタル13日付)。さらに、〈会見後に担当者は「私たちは再委託先。協議会や経産省に問いあわせてほしい」と話した〉というのである。
恫喝メッセージを送りつけて圧力をかけるというコンプライアンスもへったくれもないことをやっておきながら、それどころか独占禁止法違反にあたるのではないかという指摘まであるというのに、質問を遮り、挙げ句「私たちは再委託先。経産省に問い合わせろ」とは……。