一方、Twitterの著名なネトウヨ安倍応援団アカウントは〈朝日の詐欺タイトル〉と言い、〈なにか新しくマスクの配布が決まったかのように書いてるけど、「全戸向けマスクとは別に」介護施設などに以前から配っていたマスクを予定通り配っているという話で、新しいマスクを発注したわけでは無いんだよね〉などと反論しているが、報道には、〈全戸向けの配布が完了した2日後の6月22日にも、伊藤忠商事など9業者に計約5800万枚を発注〉とある。ようするに、政府は、国民からさんざん批判を浴びたあとに、あり得ない枚数をあらためて発注しているのである。
あれだけ国民から「いらない」「役立たず」と拒絶された上、コメントにもあったように介護施設や保育所で求められている物資や支援はほかにある。そうしたニーズを汲み取って、フレキシブルに対応するのは当然のこと。それを「一度決めたからには引き下がれない」というのは、日本軍が無謀と言われながら決行させたインパール作戦と同じようなものではないか。状況がまるで違う3月に決めたとおりのまま布マスクを配布しつづけようというのは「無能」と呼ぶほかなく、そのことに多くの人は怒りを覚えているのだ。
しかも、配布先である介護施設は重症化リスクの高い高齢者のための施設であり、そこに“布マスク”を配布するというのはリスクを高めるような愚行以外のなにものでもない。実際、聖路加国際大学の大西一成准教授が「アベノマスク」と顔面のすきまなどから出入りする空気中の粒子の「漏れ率」を調査した結果、漏れ率は100%だったことが判明している(朝日新聞7月6日付)。
こう言うと、「布マスクはWHOも推奨している」と反論する者もいるかもしれないが、WHOは〈布マスクは、それぞれ異なる材質で最低3層の構造にすることが望ましい〉(時事通信6月6日付)としており、一方の「アベノマスク」は1枚のガーゼを折りたたんで15重にしたもの。異なる素材になっていないのだ。くわえて、WHOは〈流行地では60歳以上や持病がある人の場合、医療用マスクを着用することを勧告〉している。つまり、介護施設には「アベノマスク」を配るのではなく、サージカルマスクや医療用ガウン、フェイスシールド、消毒用品など必要なものを支援すべきなのだ。
いや、それどころか、前述したようにこの介護施設や保育所向けの布マスクは〈素材や形状もアベノマスクと同じ〉だというが、回収騒ぎとなった妊婦向けのほか、全戸配布の「アベノマスク」でも「ゴミがついていた」「虫が混入していた」という報告が多数ある。実際、“チームバチスタシリーズ”で知られ、医師でもある作家の海堂尊氏も〈我が家の「アベノマスク」には小昆虫らしきものがいました〉と報告し、〈医療従事者として市民のみなさんに「健康を守るために言えるアドバイス」としては「アベノマスクは絶対に着用すべからず」ということです〉と警鐘を鳴らしていた。
「アベノマスク」に虫やゴミの混入、カビの付着があったことは厚労省も認めていることで、だからこそ4月23日に布マスクを納入した興和、伊藤忠商事は未配布分の回収を発表。妊婦・介護施設など向けの分と合わせて約8億円をかけて検品作業をおこなう、と政府は発表していた。だが、結局、こうして国民の手元に虫入りの「アベノマスク」が届いていることを考えれば、今後配布分でもまた同じことが繰り返される可能性がある。