有識者や著名人も野田の発言に反応している。たとえば、乙武洋匡氏は野田発言にある優生思想と性差別の問題をこう指摘した。
〈「これぞ優生思想」という考え方をここまで無邪気に開陳できてしまうのは無知ゆえだと思う一方、私だって無知ゆえにトンデモ発言をしてしまっていることはあるかもしれない。そう思うとゾッとする。〉
〈もうひとつ別の観点から言うと、ここでお名前の挙がった方に限らず、すべての人が異性愛者であることを前提に話す時代もそろそろ終わりにしなきゃ。配偶者を持つこと、子どもを持つこと。それができない人だっているという事実を、そろそろみんなで共有していきたいですよね。〉
能町みね子氏の批判はもっと辛辣だった。
〈こんなゴリゴリの優生思想を言いながら「個人の見解です」ってわざわざつけて保険かけて(ツイートなんか誰でも個人の見解じゃん)、やっぱり猛批判され、今度は「冗談です」ってごまかしてて本当にダサい。とんでもなくダサい。以前のHINOMARUの歌詞もダサすぎて文春でとりあげた。〉
もっとも、当の野田自身は国家主義的な極右思想や確信犯的な差別・排外思想をもっているわけではないだろう。「HINOMARU」のときもそうだったが、歴史や世界の状況に無知なまま、なんとなくムードに乗っかって口にしただけ。「冗談で言ってます」と軽い調子でごまかしていたのを見てもわかるように、本人はいまも何が問題なのかよくわかっていないのではないか。
いや、それは野田だけではない。ネットの反応を見ていると、実は批判と同じくらい「何が問題なの」「冗談だろ、こんなことでなに目くじらをたててるの」「ほめてるんだからいいだろ」といった擁護意見が多い。
つまり、彼らもまた、その発言がナチスドイツと同じ優生思想であることも、優生思想がいかに危険であるかもまったくわかっていないのだ。