豪雨非常災害対策本部会議に出席する安倍首相(首相官邸HPより)
梅雨前線の影響で7月3日から日本列島を襲っている記録的な集中豪雨。昨日9日、「令和2年7月豪雨」と命名されたこの集中豪雨はいまなお被害を広げ、9日20時台時点でのNHKのまとめによると、65人が死亡、1人が心肺停止、16人が行方不明となっているという。
一方、これまで一貫して災害対策をおざなりにしてきた安倍政権は、今回もそのいい加減ぶりを露呈させた。
ご存知のとおり、今年は新型コロナの影響もあって災害時の避難対策が必要だと早くから言われてきた。実際、安倍首相も5月25日の会見で「政府としても災害発生時には感染防止対策としてマスクやパーティションをはじめ、必要な物資をプッシュ型で、これまで以上に迅速に支援していくことができるように準備に万全を期してまいる考え」と述べていた。
ところが、そうしてプッシュ型支援として政府が被災地に送った段ボールベッドは、使い物にならなかったというのだ。
7月4日のNHKニュースでは、内閣府は段ボールベッドを1000個、非接触型の体温計100個を熊本県の広域物流拠点に向けて輸送をはじめた、と報じた。しかし、7日放送の『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)によると、甚大な被害が出ている熊本県人吉市の避難所となっている体育館に届いた段ボールベッドについて、現地入りしている専門家が「一部の段ボールベッドの耐久性が不十分」と指摘し、大半が使用されないことになったという。
人吉市だけでも当時約1100人が避難生活を余儀なくされていたというのに、熊本県に対して1000個しか段ボールベッドを送っていないこともどうかと思うが、さらにそれが使い物にならないとは、あまりにも杜撰と言うほかない。
しかも、菅義偉官房長官は頑として政府のミスを認めようとしなかった。実際、7日午後の記者会見では、テレ東の記者が「送られた段ボールベッドのうちの一部が強度不足であるとして一旦使用しないという判断をしたということだが、この事実関係と、こうした事態が起きていることへの受け止めは」と質問。だが、菅官房長官はこう答えたのだ。
「ご指摘の段ボールベッドについては、すべて内閣府が調達をする際に設定をした基準を満たすものをお届けしている。今回、一部の自治体から、より強い強度のものがほしいとの要望があった。あらためて別のものを送るように調整をしていると報告を受けている」
「なお、これらについては先日、成田空港でも使用実績があり、強度不足とは承知していないが、被災自治体の要望に極力お応えをしたい」
繰り返すが、人吉市の避難所では現地入りしている専門家が「耐久性が不十分」と判断したのだ。にもかかわらず、「強度不足ではない」と言い張り、あたかも人吉市側が「より強い強度のものをほしい」とワガママな要望をしているかのように語ったのである。
安倍政権といえば、最近も大量の不良品を出したアベノマスクを、“検証はおこなっていないが、感染拡大の防止に一定の効果を有するものと考えている”などとトンデモ閣議決定したばかりだが、このように災害対応も結局は「やってる感」だけで、いかにその場かぎりの間に合わせでやっつけ仕事をしているかがよくわかるというものだ。
だが、さらにあ然とさせられる出来事が、昨日も起こった。
昨日9日、国会では参院内閣委員会が開かれ、そこでは共産党の田村智子参院議員がこの段ボールベッドの問題を取り上げ、段ボールベッドは1日1万台の製造が可能であること、被災自治体の要望を受けて都道府県が発注するのでは迅速に対応できないことを指摘。国が備蓄する必要性を訴えたのだが、それに対して自民党の平将明・内閣府副大臣は「2000セットをすでに備蓄をしていた。1500セットが熊本に行っている」「今回、また去年の台風15・19号などの評価も踏まえて(備蓄の)数量については目詰まりしないよう検討していく」と答弁した。