しかも、決定的な問題は、朝日が販売していた2枚3300円の布マスクが、安倍首相が配布を強行したお粗末なアベノマスクとはまったく違うことだ。
この2枚3300円のマスクは、マスクプロジェクトに参加した一社・大津毛織が製造した商品だが、そもそも見た目からして、鼻や顎が出てしまい「昭和の給食当番マスク」と揶揄されるアベノマスクと違って、鼻から顎まで覆う立体構造。商品説明などよれば、性能もかなりの高性能だ。
表裏2層のガーゼの間には、医療用レベルの脱脂綿と不織布シートをはさんだ4層構造になっているうえ、ガーゼは医療用などより20%ほど密度が高い。かたちも立体構造で、飛沫防止が見込まれる。耐久性があり、150回ほどの洗濯にも耐えられるという。
一方、安倍首相が446億円もかけて配布を強行したアベノマスクはどうなのか。すでに、一足早く介護施設や福祉施設などに届いているが、不満が殺到している。
毎日新聞によると、〈千葉県の障害者施設に勤める40代男性は「洗えば縮むし、小さいからずれて話しづらい。障害のある人が繰り返し清潔に使うのは難しいし、施設で利用を管理するのは現実的ではない」と困惑する。あるケアマネジャーは「求めているのは(医療用の)サージカルマスクだ」と切り捨てるなど、散々な評判だ〉という(4月15日付)。
予防効果の違いが科学的に検証されているわけではないが、この差だけでも同列に並べられるようなものではないことは明らかだろう。
ようするに、安倍首相は、お粗末なアベノマスクに466億円もかけたことを正当化し、自分を批判する朝日を攻撃するために、ネトウヨのフェイクに乗っかって似ても似つかない泉大津市の高性能マスクのことを持ち出してきたのだ。
卑劣にもほどがあるが、さらに最悪なのは、この安倍首相の発言がメディアの批判封じ込めだけではないことだ。前述したように、安倍首相が「朝日が3300円マスク販売」と発言したあと、プロジェクトを主導した泉大津市商工会議所や市内のメーカーに、ネトウヨや安倍応援団が攻撃を仕掛けている。
つまり、安倍首相が自分を正当化するためのフェイクを口にしたことで、コロナ危機を乗り越えようという地方自治体の取り組みを危機にさらしているのだ。これはもはや犯罪だろう。日本国民はいったいいつまで、こんな人物に自分の命を預けておくつもりなのか。
(編集部)
最終更新:2020.04.18 04:44