政府の専門家会議メンバーさえも「適用できる」としているのに、「新型コロナは特措法の対象にならない」と主張し、ありもしない条文をでっちあげる。これのどこが「嘘はついていない」ことになるのか。
今回も、事実でないことを発言したのは、青木氏ではなく、和田議員のほうなのだ。というか、そもそもこの非常時に、こんな細かいことをいちいちあげつらってくるというのは、自民党がコロナ対応で国民の命を救うことより、批判封じ込めに血道を上げていることの証だろう。
実際、安倍政権や自民党の言論圧力の動きはこれだけではない。3月末に「4月1日に緊急事態宣言が出る」というデマ情報がネット上で流れ、菅義偉官房長官と安倍首相が「デマ」だと相次いで否定するということがあった。
このネット情報で「親しい記者に緊急事態宣言を出すということを漏らした」とされていた西村康稔コロナ担当相が、「名誉棄損や風説の流布による業務妨害にもなりえるので警察に相談している」などと話したのだ。
公人中の公人である閣僚は、厳しい批判や揶揄も甘受するべき立場である。ましてや緊急事態宣言というのは、私権制限もともなう重大な政策だ。それに関して、いつ出るのか、どうしてそのタイミングになるのか、それが適切なのか、などあらゆる角度から推測・論評が流れるのは、ある意味当然の話だ(そもそもこうした真偽不明の情報が出回るのは、安倍政権のこれまでの数々の情報隠蔽が招いている不信感と、またどういう状況になったら出すという具体的見通しを示していない政府の怠慢に寄るところが大きい)。
それが、名誉毀損で民事提訴どころか「警察に相談」など、口にするだけでも脅し以外のなにものでもない。言論封殺そのものだ。
1日に発表された「マスク2枚」もそうだが、後手後手+場当たり対応続きで、感染防止のためのまともな検査・医療体制も補償策も打ち出せない安倍政権の新型コロナ対応には、現段階でも、多くの国民から批判の声があがっている。
このまま感染が広がれば、さらに批判が高まるのは確実で、そうなれば、安倍政権はもっと露骨に「国難だから」「国民一丸にならなければ」「いまは批判するときではない」などと批判封殺の動きに出てくるだろう。
緊急事態宣言が出れば、なおさらだ。言っておくが、安倍首相がなかなか緊急事態宣言を出さないのは国民の人権に配慮しているからなどではない。経済の影響しか頭にない“影の総理”今井尚哉首相秘書官が止めているからだ。いったん緊急事態宣言を出せば、それを最大限に利用して、報道圧力を高めてくるだろう。
しかし、玉川氏や青木氏が指摘していたとおり、言論弾圧体質の安倍政権が長年続いてきた結果、本来権力チェックが役割のはずなのに政府の圧力に弱腰になっているメディアが多く、御用メディアも跋扈している。
安倍政権の新型コロナ対応とともに、メディア圧力にも一層、監視の目を向け、おかしなことがあればその都度声をあげていかないと、本当にこの国は恐ろしいことになってしまうだろう。
(編集部)
最終更新:2020.04.03 11:29