とにかく今回の大阪・兵庫間の往来自粛は、何から何まで支離滅裂で整合性が微塵も感じられないのだ。いったい吉村知事と松井市長はなぜ、わざわざ専門家の提案文書を捻じ曲げ、勝手にこんなトンデモ方針を打ち出したのか。
吉村知事はいまにいたるまで、専門家の提案とは違う対応をとったことについて、説得力のある説明は何一つしていない。会見でも、リテラへの反論でも、肝心な理由は「政治判断」という一言でごまかしている。
松井市長にいたっては、不透明な意思決定に疑問を呈した立憲民主党・尾辻かな子衆院議員に〈無責任な国会議員は国難時においても言葉遊びでお気楽なもんです〉と噛みついたり、大阪府に問いあわせをして国からの通知がなかったことを指摘した一般のTwitterユーザーに〈政治的思惑があるのかもしれませんが、国難状況なのでデマはやめてなさい〉と逆ギレする始末だった。
しかし、こういう反応になるのも当然だろう。そもそも彼らは、まともに説明できる理由をもっていないのだ。
実は、在阪メディアの記者たちの間でも、今回の往来自粛については「松井・吉村による政治目的のパフォーマンス」という見方が大勢を占めている。
「吉村知事はライブハウスのクラスターを制圧できたなどとアピールに必死ですが、大阪では水面下で感染が拡大している可能性が高く、いつ感染爆発が起きてもおかしくない。そこに、厚労省から感染爆発の可能性を指摘されて、何かやらないとまずいとなったんでしょう。しかし、吉村氏や松井氏の最近の方針は、逆に自粛を解除する方向なので、外出自粛を呼びかけると、矛盾が生じる。そこで、同じように感染爆発の危険性を指摘された兵庫県をスケープゴートにしたんじゃないでしょうか」(前出・大手紙府政担当記者)
兵庫県をターゲットにした背景には、兵庫県の井戸知事と、吉村知事、松井市長ら維新との敵対関係があるとの見方も広がっている。
井戸知事は、橋下時代から、維新の政策や政治手法に反対してきた。都構想について「膨張主義だ。ムードだけで制度を変えるのが一番いけないこと」と発言し、2013年には、堺市長選で維新の対立候補の支援を表明。当時、大阪市長だった橋下徹が「越権だ」と反発する一幕もあった。
維新が進めるカジノについても「地域振興のために手段を選ばないという姿勢そのものが、基本的に間違っている。人が集まって金さえ使えばいいのか」「日本はすでに相当のギャンブル国家。それを助長するカジノをなぜ解禁するのか」「依存症が兵庫県内にも出てくる。行政的な取り締まりが必要になり、裏社会の活動も予想される」と、当時の橋下大阪市長や松井知事のカジノ誘致を厳しく批判してきた。
「兵庫との往来自粛をぶちあげたのは、天敵だった井戸知事への嫌がらせという側面もあるんじゃないか。兵庫の実効再生産数が大阪より悪いことに目をつけ、兵庫との往来に絞って自粛を呼びかけ。大阪より兵庫のほうが感染がひどいと印象付けようとしたんだろう」(在阪ジャーナリスト)