首相官邸HPより
大きな混乱を招いている安倍首相による小中高、特別支援学校への一斉臨時休校要請。休校要請しておきながら、保護者への休業補償を打ち出さなかったことや急すぎる要請によって保護者や学校現場からは悲鳴があがっていたが、これに焦ってか、萩生田光一文科相はきょうになってトーンを弱め、「地域や学校の実情を踏まえて様々な工夫があってよい。全国の皆さんの声を聴きながら、柔軟な対応をしていきたい」などと言い出した。
さらに、文科省の担当者は〈一斉休校はあくまでも要請だとして、各教育委員会などが休校しない判断をすることは排除しない〉(共同通信)という見解まで示したのである。
昨晩、安倍首相は英断を下したと言わんばかりに一斉休校を要請しておきながら、批判があがると教育委員会や自治体に丸投げする……。そういうところが「後手後手」「責任感が見えない」と批判されているのに、相変わらず場当たり的にしか対応できていないのだ。
しかも、安倍首相はこれだけ国民から批判の声を浴びているというのに、一晩たっても、信じられないようなことを口にした。
本日おこなわれた衆院予算委員会で休校要請にともなう保護者の休暇取得について問われると、こう答弁したのだ。
「経済界にも有給休暇を取りやすいように対応してくださいということもお願いをします」
絶句するほかない。「昨日は発表できなかったが、早急に国が休業補償を出して保護者を支援する体制を整える」とでも言うのかと思いきや、なんと、まさかの「有給休暇を消化しろ」と言い出したのである。
言うまでもなく有給休暇の取得は労働者の権利だが、それは労働者本人の意志で自由に休むことができるものであって、今回は国の方針として休校を決定しているのだから自己都合で仕事を休むわけではない。にもかかわらず、安倍首相はこの期に及んでも個々人の有休で対処しろと言うのだ。
まったくふざけるな。有給休暇は「入社から半年間継続勤務で所定労働日の8割以上出勤」など付与要件があるし、すでに消化してしまったという人もいるだろう。ま た、すべての労働者の権利でありながら、非正規社員やパート、アルバイトなどの場合、社員と違って有休をなかなか取らせてもらえない、取りづらいという声もある。こうした有休を取得できない人たちは、この休校措置の期間、一体どうしろというのか。だいたい、有休でカバーできる日数になるともかぎらないのだ。
さらに、安倍首相は「経済界にお願いする」と言うが、経団連にお願いを出したところで、対応するのは一部の大企業にすぎない。それでなくても消費増税と新型コロナの影響で打撃を受けている中小企業が、どこまで労働者をカバーできるだろう。安倍首相は「中小企業への対応も考えなければならない」「パートで働くみなさんへの対応も検討している」とも述べたが、来週2日からの休校を要請しておいて、いまそれを言っている場合か。