身の危険を覚える状況で、こうした発言をするのは大きな勇気が必要だろう。しかしダルビッシュは世界の人皆が平和で仲良くしてほしいと、その思いを発信した。
しかも、ダルビッシュは今回の動画で、小学3、4年生の時に2度イランを訪問した経験を明かし、中東やイランへの思いも語っていた。幼いダルビッシュは父親の出身地イランを訪れた際、日本と比べ貧しく環境も違っていて驚いたこと、お腹を壊したこと、しかしそこで友人ができたりカスピ海がすごくきれいだったと語ったうえで、こう呼びかけた。
「中東は良いところがいっぱいあるので。中東に対してあんまり良くない思いを持っている人もいるかもしれませんけど、そんなに(中東にも)ネガティブな人ももちろんいるけど、いい人もたくさんいて、美しいところであるので、イランとかに偏見を持たないようにしてほしいなと思います」
ダルビッシュは自身も語ったことがあるが、学生時代にハーフだということでいじめにあった経験を持つ。そうした経験のせいか「高校を卒業する頃までは外国人の血を受け継いでいることを否定したい部分があったと思います。否定したいけれど認めなければいけないという複雑な気持ちですね」とダルビッシュの母・郁代さんは大阪市の「多文化共生社会をつくりましょう!」という冊子のなかで明かしている。しかしその葛藤を乗り越えたのではないかとして、国籍選択の際のエピソードについても母・郁代さんは語っている。ダルビッシュはイラン・日本の両方の国籍を持っていたが、12年ほど前、22歳というギリギリのところで日本国籍を選択した。それは父親への配慮、そしてイランへの思いからだったという。
「22歳になるギリギリまで選択を延ばしていたのは、父親への気配りだったのですね。「自分は半分イランの血が流れているのだし、お父さんを尊敬している。お父さんの国を大事にしたい」と言ってくれたんです」
イラン、日本というルーツを持ち、現在はアメリカで活躍するという自らの立場に向き合い、勇気ある発言をしたダルビッシュ。その姿勢を高く評価するとともに、今後もこうした声を上げ続けることをぜひ望みたい。
(伊勢崎馨)
最終更新:2020.01.14 12:44