首相官邸ホームページより
やっぱり、日本はいまも前近代的なカルト国家のままなのだろうか。昨日21日午後から天皇の即位の儀式が行われたが、Twitter上では「儀式が始まった途端に雨が止んで虹がかかった」なる声が湧き、神話の「天照大神」や「天叢雲剣」、さらには「エンペラーウェザー」なる造語がトレンド入りした。東京では午前中から降っていた雨が小康状態になり、晴れ間も見えたことから、ようするに “天皇の神の力が天候を変えた”と言いたいらしい。たとえばこんなツイートだ。
〈・天叢雲剣で雲がかかって大雨、普段祀られてる神社近辺は晴れ
・儀式直前に天照大神が降臨したかのように晴れる
・虹が低くかかり結界のようになる
・イザナギとイザナミが下界に来る時の架け橋で虹を使用したという神話
神様は本当にいるのか…〉
〈天皇のパワーがすごい、即位礼正殿の儀の時に空が晴れて虹が出る〉
〈天叢雲剣 で雲がかかり大雨になり、儀式直前には #天照大神 が降臨したかのように晴れる。
そして、虹が低くかかり結界のように。
イザナギとイザナミが下界におりる時、虹を使用したという神話。
日本は間違いなく神の国。〉
〈これが神の力かぁ!! 万歳!万歳!万歳!〉
かつて総理大臣が「日本は天皇を中心とした神の国」だと口にして強い批判を受けたが、天皇を現人神とするような言葉や「神の国」という言葉が溢れ返ったのだ。
しかも、こうした言葉を口にしたのは、一般ユーザーだけではない。作家の百田尚樹氏も〈これほど美しい虹が偶然に起こるはずもない。天が新天皇の即位を寿ぎ、日本を祝福しているのだ〉と投稿した。
百田氏のツイートには〈御意。天照大御神もお喜びなのでしょう〉〈しかも、こんな完璧な虹なんか、そうそう現れないって! 天皇陛下の霊験、ハンパない!〉〈天照大明神が日本を照らして下さる〉〈改めてこの国に生まれて良かった。そして命をかけてこの国を護り続けてきてくださった全ての先人、英霊に感謝〉なるファンからのコメントが相次いだ。
他にも、複数のネトウヨ系サイトが、東京で雨が止んだことや一部で虹がかかったことを何かしら“天皇の力”に結びつけるようにして、嬉々としてまとめている。こいつらは正気なのか。
いや、こんな妄想オカルトポエムにいちいち目くじらをたてるな、という意見もあるだろう。しかし、これ、会社の同僚の結婚式で、雨が突然やんだのを「お二人の門出を天も祝福してくれているようであります」などとスピーチしているのとはわけが違うのだ。
だいたい「天皇のパワーで東京が晴れた!」とはしゃぐ彼らは、その瞬間も、先日の台風による大雨の影響で河川が氾濫し、避難を余儀なくされている人たちがいることを忘れているのか。たとえば、台風19号で大規模な浸水に見舞われた宮城県丸森町や長野県の千曲川流域では即位礼が行われた22日も朝から雨が降り、午後には丸森町では大雨洪水注意報、千曲川流域では雨の影響で再び氾濫の恐れがあるとして避難指示が出された。普通なら、こんなときに天皇に雨をあがらせて虹をかける“神通力”があるかのような与太話を聞いたら、東京でなく各地の災害をくい止めてくれ、という感情になるだろう。
ところが、連中は安倍首相と同じで、まさにこの時、各地には大雨で苦しんでいる台風被災者がいる、そのことへの想像力も配慮も全くなく、ひたすら皇居の周辺だけで雨が上がったことを喜んでいるのだ。
いや、「天皇のパワーで東京が晴れた!」「虹がかかった」という声が上がることに危険性を感じるのは、その無神経ぶりと権威主義だけではない。このオカルト的な物語こそが天皇制支配の本質であり、日本を狂気の戦争に駆り立てたものだからだ。