しかも、宮藤官九郎がどこまで明確に意図しているかは不明だが、『いだてん』が描いているこれらの問題はすべて、今、日本で起きている問題につながっている。
たとえば、朝鮮半島出身のマラソン選手をめぐるエピソードは、この間、日本で巻き起こっている嫌韓やレイシズムの問題を考えさせられたし、第37回の田畑の「日本はそういう国。政治とスポーツを別に考えられない」「お国のためのオリンピックなんて俺はいらん」というセリフは、昨今のサッカーW杯やラグビーW、2020年のオリンピックなど、過熱するスポーツナショナリズムへの批評的な意味合いさえ感じられた。
そういう意味では、いまの『いだてん』こそ、多くの人に見てもらいたいと思うのだが、残念ながら、冒頭で述べたように、視聴率はどんどん下がり、10月13日放送回では、同時間帯に放送され39.2%という高視聴率を記録したラグビー日本vsスコットランド戦の裏で、3.7%を記録してまった。
そして、きょうの『いだてん』は、やはりラグビーW杯日本vs南アフリカ戦の放送を急遽、BSでなく地上波で放送することになったため、休止になった。
スポーツのナショナリズム利用に異議を申し立ててきたドラマが、いま、「日本人の心」などという言葉でまさにナショナリズムをかき立てているラグビーの中継によって隅っこに押しやられていく。皮肉だが、2019年の日本を象徴する出来事だと思わずにはいられないのである。
(編集部)
最終更新:2019.10.20 02:04