しかし、空気を読んでいるだけだから、無害ということではない。むしろ、〈テレビでは馬鹿な方を叩くし、高座では笑いにつながる方を茶化す〉と言う志らくの意識こそが、強い者の不正を野放しにし、弱者叩きをエスカレートさせる最大の増幅装置なのだ。
クラスでいじめが起きたとき、いじめを咎めず、いじめに乗っかりいじめられっ子を笑いのネタにするお調子者も、ナチスドイツで、ヒトラーのユダヤ人排斥を煽った御用芸術家も、戦前の日本で無謀な戦争を煽った新聞も、おそらく志らくと同じ意識から出発している。志らくはそのことの危険性にまったく気がついていないのである。
しかも、志らくの発言を検証していると、たんに周囲に合わせるというだけではなく、志らく自身に最低限の人権意識や倫理感覚が欠如している危険な部分があることも垣間見える。
というのも、2016年7月、小池百合子が当選した東京都知事選の際、志らくはこんなツイートをしていたからだ。
〈小池百合子は名誉ある撤退はしないのでは。だってテロだと言われているのだから。総理の椅子の確約でもしない限りには。桜井パパではないもう一人の桜井候補。橋下さんと喧嘩した人。YouTubeで見られる。パチンコの利益700億が北朝鮮に流れテロ、拉致に使われているからという立候補記者会見〉(2016年7月2日)
〈もし桜井誠氏が言うようにパチンコの利益が700億が北朝鮮に流れ、本当にテロ拉致テポドンに使われているのならば大問題。パチンコを国営化するしかない。だがだからといって在日の人々を一色たんにして攻撃してはいけない。韓国朝鮮は日本を一色たんに攻撃していてもだ。〉(同上)
〈泡沫候補にしては勿体無いぐらい、好き嫌いは別にして、しっかりした政策を持っているとは思います。ただ在日朝鮮人が全て敵のように聞こえてしまうところが怖い。勿論そうはいってはいないのだろうが。かなりの票を集めると思います。〉(2016年7月27日)
そう、差別団体・在特会元会長の日本第一党党首で、「朝鮮人を皆殺しにしろ」と扇動していたレイシスト・桜井誠の主張を紹介し「YouTubeで見られる」「泡沫候補にしてはもったいない」、「しっかりした政策を持っている」などと評価していたのだ。