さらに、遊就館が日本の戦争犯罪を完全にネグっているという事実も強調している。
〈大日本帝国軍の「慰安婦」あるいは性奴隷、生きている戦争捕虜を使って生体兵器の人体実験をおこなっていた731部隊についての言及は、ここにはない。保存状態のよい泰緬鉄道の機関車が目立つように展示されているが、この鉄道を敷設させられたおびただしい数の連合軍捕虜が耐えた苦痛、そして彼らが泰緬鉄道を「死の鉄道」と呼んでいたことには一切触れていない〉
靖国神社の本質や遊就館の歴史修正主義的展示をめぐっては、これまでも米紙ニューヨーク・タイムズや仏紙ル・モンドなどが驚きをもって伝えてきたが、それが今回、ラグビー英国軍代表の靖国参拝によって、欧米であらためてスポットが当たったかたちだ。
いずれにしても、日本のネトウヨや極右文化人たちは、「靖国を問題視するのは中国と韓国だけだ」「戦争で亡くなった人たちを慰霊するのはどの国でも当たり前」だのと吠えているが、イギリスのタイムズも指摘しているように、靖国は単なる追悼施設では決してない。国家神道の中心として侵略戦争を正当化した装置であり、戦後も、帝国主義や軍国主義を賛美する歴史修正主義の根源のひとつなのである。
それが国際的認識のスタンダードだ。英・国防省が「公式訪問ではない」「英国政府は靖国訪問がいかに繊細な問題であるかを完全に理解している」とタイムズにコメントしていることからも、それは明らかだろう。
それにしても、極右歴史修正主義をばら撒き、外国人の靖国参拝に狂喜の雄叫びをあげるネトウヨや安倍政権の政治家を見ていると、本当に心配になってくる。ラグビーW杯や東京オリンピック・パラリンピックで、これからも世界から大勢の外国人が訪日するからだ。オリンピック・パラリンピック会場への旭日旗持ち込み問題にもいえることだが、こんな国際感覚が欠如したままの状態でいいはずがない。
(編集部)
最終更新:2019.09.20 09:24